「茶研」訪問

 近畿圏の梅雨明け宣言が行われた8月3日(月)、午後から、製造班と広報のメンバーで、宇治市の白川にある「京都府・茶業研究所」を訪問しました。1925年に創設された歴史ある研究所です。宇治茶の業界では、「茶研」というかわいらしい愛称で知られています。
 茶研の藤井所長さんに、南山城村の茶業および茶の特性、とくに気候・土壌がつくりだす品質について詳しくお伺いしてきました。
 また、藤井所長さんは、今年度の京都府茶品評会の審査長もされていますので、品評会の意義、審査基準などについても伺ってきました。
 ちなみに、明日4日から6日まで「第62回 関西茶品評会出品茶審査会」兵庫県篠山市で開催されます。岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、奈良、高知、兵庫から自慢のお茶502点が出品されます。もちろん、南山城村の茶農家さんも出品されます。昨年、南山城村は、普通煎茶部門で産地賞を受賞しています!

 茶研は山の中にあるので、JR宇治駅からタクシーで行きました(880円)。平等院の横の道から宇治川沿いを進み、竹林の中を登っていく景色のよい道でした。

 ちょっと早く着いたので、まずは記念写真です。
 うしろの竹林にも、ちゃんと意味があります。「竹林があるところの茶園はよく育つ」「竹も茶もともに酸性土壌を好む」そうです。


 所内には茶畑もあります!ほかに、てん茶炉をはじめとする製茶工場もあります。気象観測も行われています。
 ごり「大学にもこんな茶畑があったらいいのにな〜」。


 約束の時間になり、所長室に案内されました。ドキドキです。
 藤井所長さんは、私たちの拙い質問に一つ一つ丁寧に答えてくださいました。また、玉露も直々に淹れていただき「甘味と旨味のちがい」「一煎目と二煎目・三煎目のちがい」など、本格宇治茶の魅力を教えていただきました!

 事前に質問内容をお伝えしていたので、上の著書に収められている藤井所長さんの論文「茶産地の気象と土壌」をベースに説明していただきました。

 藤井所長さんのお話を伺って、
 (1) 品評会の意義は、「美味しいか・美味しくないか」を決めるよりも、「生産された茶の特質を明らかにして、茶の品質向上と生産技術の改善を図る」ことが中心。外観・水色・香り・味の「欠点」を指摘し、農家にフィードバックして品質改善・生産技術向上につなげることが最も大切。
 (2) 従来、「古い土壌の産地ほど優良品質のお茶がつくられる」と経験則で語られてきたが、「地質年代の新しい産地のお茶が品質面で劣る」とは言えない。地質よりももっと大切なのは、山と川がつくる「昼夜の寒暖差」や「川霧」を生む地勢や地形であること。
 (3) この寒暖差や川霧が新芽を柔らかくする。柔らかな新芽からは、香りに優れ・まろやかな味のお茶が生まれる。また、この寒暖差や川霧が「自然の覆い」となり、旨み成分であるアミノ酸(テアニン)を、渋み成分(タンニン)に変化しにくくさせる。寒暖差や川霧をうむ地勢や地形、気象を次世代に継承していくことは大切な課題であること。
 (4) 南山城村の茶業は、「花崗岩類」という地質面での不利を茶農家の技術や努力(栽培プロセスのトータルな管理能力)で克服し、産地賞受賞などの成果をあげてきたこと。
 (5) 今年のJA茶市場の取引動向をみていると、デフレの影響もあって、二番茶の価格下落が著しい。ペットボトル茶のブームも、過当競争ぎみで,数年前から頭打ちになっており、リーフ茶の新たな消費拡大策を考える必要があること。
などがよく理解できました。(私たちの解釈が入っていますのでご注意ください)

 今回の「りゅうこく茶」の企画・製作で連携させていただいている「NPO法人 南山城村 茶ECOプロジェクト」の活動の一つに、「茶ECO(ちゃえこ)かざぐるま」を子供たちとともに製作して「ふるさとの風景を想起しよう」という活動がありますが、今日あらためてそうした活動の重要性を認識しました。
 ということで、
りゅうこく茶のコンセプト=
「村の茶業の地力」×「学生の思い切りのよさ」×「問屋の合組力・小売の伝統文化継承力」×「持続可能性」

に集約されると思います。
 「学生の思い切りのよさ」とは,別の言葉で言うと、まさに何も失うもののない「若者」=「よそ者」=「ばか者」が、「(長い伝統を有する)老舗企業が手をつけにくい分野に思い切って突っ込んでいく」という意味ではないか,と考えています。「伝統」をどの程度継承するかの「ばかさ加減」も難しい問題です。この「加減」は,「老舗」の大先輩の方々からのアドバイスに頼るしかありません。学生の「独りよがり」は「ばかそのもの」だと思います。
 「持続可能性」の部分については、まだまだ思いつきの域を出てませんが、今後、茶ECOさんと協議して、
 「りゅうこく茶の収益の1%を、茶の苗木の植樹活動にあて、『宇治茶の郷』南山城村を維持・継承する」
 などなど、「持続可能性」にかんする様々な取り組みにつなげていけたらいいなと思います。
 でも、そんなに収益ってあったっけ....。販売班で原価計算しなおしてみます(笑)。

研究所の入口で藤井所長さんと記念写真です!ご専門は農芸化学だそうです。次回にお邪魔したときは、「お茶と農薬」の話をぜひ教えていただきたいと思います!


 宇治橋のたもとで。塔の島の眺めはとても癒されます。

 はるかさんは、通圓(1160年創業)の抹茶ソフトのほうに吸い寄せられていきました。

 帰りに、リニューアルされたばかりの宇治茶道場「匠の館」に寄って、先ほどの 小西茂毅編著『日本茶の魅力を求めて』(大河書房、2005年)を研究室用に2冊購入しました。

 ※今回の茶研訪問の目的は、私たちの「りゅうこく茶」に対する個別的評価や「お墨付き」をいただくことではなく、あくまでも自然科学的見地から「宇治茶の主産地としての南山城村の一般的特性」を把握することです。誤解のないようにお願いいたします。



 とはいえ、「りゅうこく茶については一言も話さなかった」と言ったらウソになります。でも、所長さんは、「そうですか...」と「渋い顔」をされていたように記憶しております。
 所長の「渋い顔」は、「わざわざそんなことをしなくても、宇治茶は十分に甘くてまろやかなのになぁ...」という意味だと勝手に解釈させていただきました。

【追伸】
藤井所長の「茶産地の気象と土壌」(小西編著、前掲書)を読んで:
一番印象に残ったのが、宇治茶の「テロワール」「風土」という言葉でした。
 「物づくりの風土は、.....先人達の営為の積み重ねと与えられた自然環境とが調和し、その土地に適した物づくりが形作られていく。風土とは、その自然に人間が働きかけ、人間の知恵と労働が作り出した所産なのである。」(p.144)