マーケティング戦略 (その2: 煎茶と抹茶の両面戦略)

 【宇治茶の三大産地の生産動向】
 宇治茶は,京都府南部の山城地域で生産されています。この山城地域の中で,和束町南山城村,宇治田原町が,宇治茶の3大産地をなしています。
  下の表は,宇治茶の三大産地の荒茶生産量を示しています。2008年の『京都府茶業統計』をもとにして作成したものです。%は横にみていってください。

 ついでに棒グラフも載せておきます。

 私たちが連携している南山城村は,荒茶の生産量でみると,年間768トンで,府内では和束町に次いで第2位です。
 生産品目の割合をみると,南山城村は,「煎茶」の占める割合が高く,宇治煎茶の代表的な産地です。
 「日本緑茶発祥の地」・宇治田原町は,抹茶の原料になる「てん茶」,そして単価の高い「玉露」の割合が高いことがわかります。
 宇治茶の筆頭産地である和束町は,以前は,南山城村と同様に「煎茶」の割合が高かったのですが,近年,「てん茶」へシフトし,高付加価値化を進めています。
 南山城村の茶業の生産動向】
 次に,南山城村の茶業の最近の動向をみてみましょう(京都府茶業統計)。私たちが特に注目するのは,下の2つのグラフです。

 上の生産金額の図をみると,南山城村では,「煎茶」の生産金額は年々減少し,この5年間で11億円から8億円弱になってしまいました。5年間の平均減少率はマイナス7.6%ですので,この調子で減少を続けていくと,村の「煎茶」の生産金額は,5年後の2014年には5億円を割り込んでしまいます。
 これにたいして,「てん茶」の金額は大幅に増大してきています。上のグラフでは「大幅増」はわかりにくいかもしれませんので数字で表すと,5年間の平均増加率は44%です!

 生産金額を生産量で割って,1キログラムあたりの「生産(平均)単価」を求めると,以下のようになります。

 まず,「煎茶」の単価ですが,ここ5年間で,キロ2200円台から1800円前後まで次第に低下していることがわかります。
 「てん茶」は,キロ3000円から3500円のあたりで推移しており,高単価を維持しています。2008年の数字でみると,ざっくり言って,「てん茶」の単価は「煎茶」の約2倍になっています。
・・・・と書いてくると,「てん茶」へのシフトは,いいことだらけのように見えてしまいますが,京都府全体の動向をよく見ると,実はそう簡単ではありません。下の図は,1990年〜2007年の京都府の「てん茶(一番茶)の平均価格」を示しています(京都府茶業統計)。ここに見られるように,近年,「てん茶」の価格は下落しています。

 下の図は,京都府の「てん茶の生産量と平均単価」の推移を表わしています。こちらの統計には一番茶以外も含まれています。「てん茶」の生産量が増えるほど平均単価が下落していることがよくわかります。

 以上のような「てん茶」の価格低落の原因は,専門家によれば下記のとおりです。
 「これは,食品利用の安価な下級てん茶が大量に流通したため,てん茶全体の平均価格を引き下げているものだが,機械摘みてん茶の品質が向上していること,高級てん茶の需要が減少してきていることもあり,手摘みてん茶価格の下落を引き起こしている。」(『茶大百科Ⅰ』農文協,308ページ)
 茶農家が「食品利用の安価な下級てん茶」の生産を進めると,自分で自分の首をしめることにつながってしまいます。生産者としては,最近の「抹茶ブーム」を手放しで喜ぶわけにはいきません。とはいえ、てん茶工場を建てると稼働率の維持も大切ですので、なかなか難しい問題です。
南山城村産「りゅうこく茶」がめざすもの】
 以上から導かれる結論は-------南山城村の代表的な産品であり,大臣賞や産地賞を何度も受賞するほどの「地力(じヂカラ)」をもっている「煎茶」生産の減少をくいとめ,村の新しい芽である「てん茶」の生産を伸ばしていくような「両面戦略」が大切ではないか,ということです。「煎茶からてん茶への転換」ではなく「煎茶もてん茶も両方大切」だと考えています。
 この「両面戦略」の目指す姿をイメージ図で描くと,下の図のようになります。09年以降は、私たちの「思い」です。

 りゅうこく茶は,このような「煎茶+てん茶の両面戦略」をベースに,高付加価値の製品化を進め,「南山城村の地力=個性をふんだんに表現しつつ,今後の村の茶業のあり方を指し示すようなお茶」をめざしたいと考えています。

 てん茶の生産を増やしていく上でとても頭の痛い問題は,上で指摘した「食品利用」の問題以外に,以前7月6日のブログで紹介したように,てん茶工場を設置するに数千万円もの設備投資が必要だという点です。この投資は,村のすべての茶農家さんができることではありません。
 この問題を解決する一つの方法は,南山城村の茶農家相互が生産ネットワーク(分業と協業)の仕組みをつくることです。これが私たちの研究テーマである「地域内経済循環」の構築です。
 もちろん短期間で実現するのは難しいですが,りゅうこく茶がその媒介役を果たせるようになったら素晴らしいな,と考えております。