マーケティング戦略 (その3: 高付加価値化と購買層の若返りを)

【緑茶の消費動向】
 緑茶の消費動向のおおまかな傾向は,ごく簡単には,総務省『家計調査』でつかむことができます。
 下のグラフは,1978年から2008年までの「緑茶の1世帯あたり年間支出金額と購入量」を示しています。
 支出金額(緑色の線)をみると,バブル期の1980年代後半から90年代初めに増大しますが,98年以降は減少の一途をたどっています。2007年には,ついに,「緑茶」の支出金額は,ペットボトル茶など「茶飲料」(黒色の線)のそれを下回ってしまいました。
 緑茶の購入量(ピンク色の線)は,バブル期にやや盛り返しますが,1970年代末からほぼ一貫して減少しています。

 「本格的なリーフ茶への入口としてペットボトル茶を」という意見を茶業界の方からうかがうことがあります。しかし,上の統計をみるかぎりでは,その意見は説得力を欠いていることがわかります。「緑茶と茶飲料とは別物であり,補完的な関係にはない」と考えたほうがよさそうです。本格リーフ茶へのエントリー商品は別個につくるべきではないでしょうか。
 ひょっとすると,代替的な関係,つまり「ペットボトル茶の消費額が増えれば増えるほど,リーフ茶の消費額が減少する」「茶農家が飲料メーカーのペットボトル茶用に茶葉を供給すればするほど,自らの経営基盤を掘り崩してしまっている(自縄自縛?)」ということが言えるのかもしれません。これ自体の当否は,とても大きなテーマなので,今後の課題にしたいと思います。

 次に,同じ『家計調査』をベースにして,緑茶の価格をみてみます。下のグラフは,緑茶100グラムあたりの平均単価の動きを示しています。2000年をピークに,価格は低落しています。06年からはやや持ち直しています。

 このような緑茶の価格低落の原因は,茶業だけの問題ではなく,日本経済全体の不況とデフレーション(物価下落)を反映したものだといえます。雇用者所得の減少による消費節約が最大の原因です。
 デフレを別のもっと精度の高い統計でみてみましょう。下の図は,総務省『消費者物価指数』から作成したもので,物価指数の対前年増減率を示したものです。ここで示されているように,緑茶の価格は,消費者物価指数(総合)とほぼ同様の動きをしています。

 価格も消費額もどんどん減少する「デフレの荒波」から脱却するためには,根本的には,雇用者所得の増大とそれによる消費増大が必要です。簡潔に言うと,「消費主導型経済への転換」なのでしょうが,そうなるには相当の時間がかかりそうです。それを悠長に待っていると茶業そのものが相当疲弊してしまうでしょう。消費者の潜在的ニーズを掘り起こして高付加価値化につなげる戦略が求められています。
【年齢層別の消費動向】
 下の表は,さきほどの『家計調査』に収録されている「緑茶の年齢層別の消費動向」です。それぞれの項目の第1位と第2位に色をつけてみました。同じ嗜好品の部類に属する「紅茶」と比べると,緑茶消費の特徴がよくわかります。

 緑茶の主な購買層は,「70才以上」と「60才代」であり,高齢化しています。
 また,支出金額や購入量が年齢層によって大きな開きがあることも,緑茶の特徴です。
 緑茶の消費を拡大するためには,少なくとも紅茶並みに,購買層の若返りをはかることがぜひとも必要です。りゅうこく茶はここに一石を投じていきたいです!
 「購買層の若返り」という難問を解く鍵は,「食品や飲料製品の<原材料>としての低級抹茶」ではなく,「<茶道>関係者のための高級抹茶」でもなく,「普段の<お茶>としての抹茶」の中にあると考えています。消費者は「普段の<お茶>としての抹茶」を求めているのではないでしょうか。

 ※ちなみに,上の表で,「29才以下」の平均単価が高くなっているのは注目に値しますが,過去数年のデータをみるかぎりバラつきがあるので,まだ確かなことは言えません。