スリランカ紅茶プランテーション訪問記 (1)

 ゼミ生5名、全員、無事にスリランカ・スタディツアー(8月19日〜26日)から帰国しました。
 とりあえず、速報版をお届けします。
 8月23日、私たちのフェアトレード紅茶「光」を栽培・製茶しているウバ州ハプタレーのグリーンフィールド農園を訪問することができました。
 「自分たちが企画し販売に携わっているフェアトレード紅茶の生産者に会う」という念願がかないました !


 まずは、ウバを地図で確認します。テキサス大学の図書館がいい地図を持ってますので、こちらをご参照ください。中央高地の東側にウバ州があります。そして、バドゥッラ(Badulla)から鉄道線路を南に少し下がったところがハプタレー(Haputale)です。




 グリーンフィールド農園の事務所に到着。
 工場長さんがお出迎え。

 中村尚司先生「ここから茶園まで車で移動します」。

 「車....」
 「もしや...」
 なんとなく、予想はしていたのですが....


 移動手段は、やはりこれ。
 南山城村スリランカも事情は同じ。トラックの荷台でした(笑)。

 とっても気持ちよかったです !

 みんな大喜びです !

 茶畑に到着です !
 荷台から降りるのは、なかなか苦労します(笑)。
 Mahindra(マヒンドラ)はインドの自動車メーカーですね。

 グリーンフィールド農園は、ウバ州の高地ハプタレーというところにあります。
 茶畑は標高1200〜1700メートルの山あいにあるので、とても見晴らしがいいです。

 よく知られているように、スリランカの紅茶は、産地の標高によって、以下のように3分類されます。
 (1) ハイ・グロウン: 標高1200メートル〜 (ウバやヌワラエリヤ等)
 (2) ミディアム・グロウン: 600〜1200メートル(キャンディ等)
 (3) ロー・グロウン: 〜600メートル(ルフナ、ゴール等)
 この分類によると、グリーンフィールド農園の紅茶は、「ハイ・グロウン」です。
 私たちの滞在中は完璧な晴天でしたが、普段は、標高が高いため、霧が急に発生して一瞬のうちにまるで雲みたいにあたりが覆われることはよくあるそうです。
 日本と同様、スリランカでも、ハイ・グロウンのものは、「昼夜の寒暖差があり霧が出やすいので、それが自然の覆いとなって独特の風味をつくる」と考えられているようです。


 茶畑です !

 グリーンフィールド農園の茶畑は、農薬を使用しないオーガニック茶園です。
 だからなのでしょうか、ここの茶園は、日本の茶園のようにピシッと「かまぼこ」型に仕立てられてはいません。


 摘採は、英語で「Plucking」、茶摘労働者は「Plucker」といいます。

 ここで働く労働者のほとんどは、「インド・タミル人」と呼ばれている人々です。
 彼女たちの祖先は、イギリス植民地時代の19世紀に、プランテーション労働力として、インド南部(現在のタミル・ナードゥ州のあたり)から導入されました。
 その後、タミル人移民は急速に増え、多数派民族のシンハラ人と対立するようになります。セイロンは1948年に独立しますが、インド・タミル人の国籍は否定され選挙権もはく奪されてしまいました。
 多くのインド・タミル人が国籍を獲得するようになるのは、1980年代末になってからのことでした。
 世界三大銘茶の一つ・ウバ紅茶は、このような長期にわたる「苦悩の歴史」が刻まれています。
 

 直近の国勢調査(1981年)によると、スリランカ全体の人種構成は、「シンハラ人」73.9%、「スリランカ・タミル人」12.7%、「インド・タミル人」5.5%、「ムーア人」7.1%、「その他」0.8%です。


 茶園の労働者たちは、両手を使い、かなりのハイスピードで摘んでいます !


 摘んでは頭につけた袋にいれる、
という作業の繰り返しです。
 労働時間は8時〜16時で、
 一日のノルマは10キログラムです。



 収穫した生葉を計量するために並んでいます。


 名前と重量をチェックしています。

 真ん中の女性がハカリで重量を計測しています。

 10キログラム摘んで、日給は500ルピーです。
 スリランカ全体の茶摘労働者の平均賃金(日給)は、2009年時点で、394ルピーです(スリランカ中央銀行、Economic & Social Statistics of Sri Lanka)。
 官庁統計を見るかぎり、グリーンフィールド農園の茶摘労働者の賃金は、業界の中では、相対的に高めであることがわかります。

 労働コストを円換算してみます。スリランカ中央銀行のHPスリランカ・ルピーの為替レートを確認すると、1ルピーはざっと0.77円程度ですんで、500ルピーは385円になります。
 摘採に限定しての話ですが、「10キログラムあたり385円」つまり「1キログラムあたり38.5円」という人件費水準は、日本に比べると信じられないくらい安いです!

 いや、そもそも1日10キロを毎日摘めるような労働者は、今の日本にいないか?!......。

 袋に詰め替えて、製茶工場に運ばれます。

 手摘みされた生葉はこんな感じです。

 中村先生から、グリーンフィールド農園の労働者たちの「悩みの種」の話も伺いました。それは、無農薬栽培茶園特有の問題です。
 農園労働者に支払われている賃金が国の最低賃金や産業平均よりも高いことは上に述べたとおりですが、実際には日給500ルピーだけでは生活していけません。
 農園労働者の生計を支えるためには、野菜を栽培し販売することで得られる副収入も重要です。
 ここで問題となる大きな制約条件は、グリーンフィールド農園が無農薬栽培であるため、農園周辺に住む労働者たちの野菜栽培も無農薬にしなければならない、ということです。
 スリランカの消費者は、先進国のように、有機無農薬栽培の野菜に対して、さほど価値を認めてはいません。ですから、高く売れません。また、無農薬栽培ですから、どうしても収穫も少なめになってしまいます。
 グリーンフィールド農園の賃金は確かに高めですが、副収入を含めた総収入でみると、オーガニックでない農園の労働者の水準よりも低くなってしまいます。
 このことに対する労働者の不満もあり、マネージャーも頭を悩ませているそうです。
 もちろん、この問題は、この農園の紅茶をフェアトレード商品として取り扱い販売している私たちにも重くのしかかってきます。
 「先進国の買い手の都合(好み)で、途上国の労働者の生活水準をかえって引き下げているのではないか」、
 「では、かといって、無農薬栽培をやめれば、問題は解決するのか」、
 簡単には答えの出ない問題です。
 ウバ地域でも、有機無農薬栽培の茶園がどんどん減ってきているそうです。
 うーん。
 無農薬栽培をあきらめるのか、それとも、グリーンフィールド農園の「希少価値」を前面にだした販売戦略を構築していくのか。
 前者は、生産者自身が考えることですので、後者の道を私たちは考えていく必要性を感じています。
 しかし、その希少価値路線の道もバラ色ではありません。
 神戸夙川学院大学河本大地講師の論文「スリランカ茶業の構造変化と有機農法導入の影響:プランテーション部門を中心に」『地学雑誌』117(3)、2008年によれば、
 「現在、有機栽培を導入した他の輸出国との間で競争が激化している。世界の有機紅茶生産量の約3分の2はインド産となり、特にダージリンでは1989年以降、収量の伸び悩みなどを背景に87の茶プランテーションのうち20が有機栽培に転換した。・・・・ケニア、タンザニア・・・なども有機栽培茶の輸出を行っている。」
 「他方、先進工業国では有機農産物市場の成長鈍化が確認されており、有機栽培茶は供給過剰の状態にある。そのため、取り組みが先駆的であったスリランカの有機栽培プランテーションにとっても先進工業国のバイヤーの獲得は困難性を増しており、今後の買い取り額の上昇も期待できない状況である」(630頁)、
とのこと。 

 少なくとも、今の私たちに言えるのは、単に「環境保全型農業」「持続可能な農業」というキャッチフレーズをうたってそれで終ってしまっているだけではダメで、農園労働者の生活を含めてトータルに考え続けていく必要がある、
ということだと思います。

 「やっぱり無農薬栽培ではメシは食えない」のか。問いかけは続きます。

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 私たちも摘み方を教わり、茶摘体験させていただきました!
 「置いた棒の上側を摘むと、良い葉が摘めますよ」
とのこと。

 「一芯二葉ですよ」。
 「はい」。
 タミール語はまったくわかりませんが、お茶をつくっている者同士、お互いに心は通じあっていました(はずです)。

 茶樹は、100年ぐらい経ったものもあるそうです。
 南山城村の茶農家の方々は「寿命は30年」と言っていましたが....。
 どうして、そんなに長く持つのか、不思議でなりません。

 有機・無農薬栽培なので、雑草も多く、無造作に栽培されている感じがしました。
 南山城村は機械摘みなので、雑草はできる限り抜きます。
 ここでは手摘みなので、機械摘みの場合のように雑草が品質に悪影響を与えることはないのかな、と思いました。
 

 ヤブキタなど日本の緑茶品種の葉よりもデカイです。
 鮮やかな緑色で、艶があるし、一目で良いものだと分かります。
 日本では、三番茶か四番茶くらいまでですが、「スリランカは50番茶まで収穫しますよ」という話も伺いました。
 どうして、摘んでも摘んでも次々に新しい葉がまた出てくるのか、不思議です。
 さっきの茶樹の寿命100年問題と同様、ナゾです。


 頭につける収穫袋を体験してみます。

 袋には5キロくらい入るそうです。
 後ろの男性は、JIPPO現地コーディネーターのウプルさんです。日本語ペラペラです。

 かなり重いです。


 茶園労働者の方々は、一見怖そうに見えるのですが(笑)、実はとても人なつっこくて、とてもやさしいです!


 バスで一番てっぺんまで登ってみます。

 ツアーの学生グループで記念写真です !
 ちょうどウバ紅茶のクオリティシーズン(旬)の時期で、しかも今日は抜けるような快晴 ! 
 絶好のフィールドワーク日和でした。

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 事務所に戻って来ました。


 テイスティングです。
 工場長さんが、農園が栽培・製造しているウバ紅茶を淹れてくれました !
 1杯あたり2.8グラムの茶葉を使い、5分間待ちます。

 紅茶は6種類あります。

 BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)、
 BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス)、
 BP(ブロークン・ペコー)、
 ダスト2種類、
 ファニングス(Fannings)の計6種類です。

 BOPとBOPFとが、JIPPOさんがフェアトレード紅茶として取り扱っているものです。
 BOPFがティーバッグ用で、BOPがリーフ用です。
 私たちが販売協力しているのはティーバッグタイプですから、「BOPF」です。
 
 ダストは、スリランカの人が普段飲んでいるもので、輸出されません。BP、ファニングスも、輸出にはまわさず、ローカル市場用です。

 等級についての詳細は、日本紅茶協会のHPをご覧ください。
 この場合の「等級」とは、茶葉の「大きさ」と「外観」を表しており、品質の良し悪しを表したものではありません。
 「ダスト」と聞くと、「塵」とか「ゴミ」を思い浮かべてしまいますが、ゴミではありません。
 グリーンフィールド農園がつくる紅茶の市場価格は、季節によって多少変動しますが、
 BOP・BOPFは1キロあたり約800ルピー、
 ダストⅠ・ダストⅡは約300〜400ルピー、
 ファニングスとBPは約200〜300ルピー
で取引されているそうです。
 市場価格は、コロンボ・オークションで決定され、水色・フレーバー・葉のひらき方などが考慮されます。オークションは1年に50回もあるそうです。


 スプーンですくってテイスティングをします。
 「まずは伊達ゼミ紅茶班の私めが先陣をきって。ズルルっ。ん......」

 「うっわ〜 ダスト、しぶ・にがーーーーーっ!」


 「やばい、違いが全然わからん!! 私たちの『光』はどれだ?????(笑)」 



 「2番目のこいつ....ダ・ス・ト」


 グリーンフィールド農園の皆さんへのお土産用に、龍大オリジナル宇治茶「雫」& フェアトレード紅茶「光」を持って来ました !
 スリランカの生産者に、私たちのフェアトレードの取り組みや、南山城村の抹茶入り煎茶をぜひ味わってもらいたかったからです。


 中村先生に通訳していただきました。 

 お茶を通じて、京都・南山城村スリランカ・ウバとの距離をほんの少しだけ縮められたような気がしました !

 握手 !

 工場長さんとの記念写真です !


 グリーンフィールド農園で栽培・製造されたフェアトレード紅茶は、美好園さんで購入できます !
 NPO法人JIPPOから直接購入したいという「社会派」の方は、こちらへどうぞ。





【番外編】
 ブログ管理人もケニア & タンザニアの旅から無事帰還しました!

 タンザニア国立公園で、ライフル銃をもったレンジャーさんと一緒に、おそるおそる、食事中のキリンの親子に近づいてみました !

 「なんか用 ? 」
と言われている気がしました。


 みんなへのお土産はやはりこれ!

 ケニア空港の免税品店で5ドルで買いました。
 バナナの葉でパッケージされています。
 よく知られているように、ケニアには、ユニリーバ社(リプトン)などの巨大多国籍企業が立地し、近年、世界最大の紅茶輸出国にのし上がりました。
 ちなみに第2位はスリランカです。ケニアに抜かれました(ITC統計、2009年版を参照)。
 スリランカの紅茶プランテーションは、1970年代に国有化されたため英国資本がアフリカに流出したり(その後、また民営化されたり)、CTC製法の採用比率が低かったりで、国際競争力が低下傾向だったことが原因です。

 なんと緑茶もあります !
 価格はやはり5ドル。
 淹れ方の説明書きをみると、
 「お湯を注いで 4分待て」
 「ミルクと砂糖なしでお愉しみください」
とあります。
 どんな味がするんだろうか....。


 関空に着いて痛感したことは、
 「関西は、赤道直下のケニアよりも熱苦しい !」
でした(笑)。