「景観まちづくり学生サミット」に参加します !

 来年1月8日(土)、龍谷大学・深草学舎で開催される「景観まちづくり学生サミット」に参加します !
 主催は「みらいの環境を支える龍谷プロジェクト(みらプロ)」です。景観法をキーワードに研究・調査活動をおこなっている龍大法学部学生の有志団体です。今回、初コラボです。



 「景観まちづくり」とは、どんな取り組みなのでしょうか?
 みらプロさんの主旨説明によれば:
 「『景観』とは、景色のように視覚のみに基づいたものではなく、そのまちの価値、歴史や文化を表すものであり、景観まちづくりとは、その景観に立脚して、市民が自分たちのまちや生活をどのように形作っていくのかを自分たち自身で考え、議論し決めていくまちづくりです。
 これは、今まで失われてきた人の生活の歴史や文化を再度意識することでまちの価値を再発見し、新たなまちの在り方、個性を見つける道標となるものであり、本当の意味での市民社会を構築する新しいこれからのまちづくりのあり方です。
 日本は戦後の開発によって多くの経済的発展や利益を生んできましたが、その矛盾が社会のあちこちに現れています。
 今後の持続可能な日本社会のためには、地域の個性、景観というそれぞれのまちの大切な資源をいかに生かすかが重要となってきます。」




 みらプロさんからのリクエストは、
Q-1.なぜ南山城村の茶業再生を地域経済活性化研究のテーマに選んだのか、
Q-2.「雫」の開発・生産・販売活動の中で学んだ「村おこしの難しさ」、
Q-3.どうすれば地域社会は元気になるのか、
Q-4.私たち学生は、どのようにまちづくりと関わっていくことができるか、
を「7分間で発表せよ」。超難しい要求です。無理です(笑)。



 今のところ、「龍大オリジナル宇治茶の生産・販売を通じて、村の茶業の振興をはかる。このことは、結果的には、南山城村の景観=四季折々のお茶づくりの景観を持続可能にする」という主旨の発言をする予定です。


 あえて主催者のリクエストに答えるとすると:
  Q-1.なぜ南山城村の茶業再生を地域経済活性化研究のテーマに選んだのか
 A-1. 村の地域再生に取り組む元気なNPO南山城村茶ECOプロジェクトや地域再生プロジェクトの方々がいたからです。
 1) 私たちは「京都府唯一の村を守る」ことを活動の軸にしているわけではありません(PR用のフレーズとして使うことはありますが・・・)。また、南山城村を「のどかで自然豊かな農村」だとも思っていません。そのような農村は、すでに日本全国からも消滅してしまったのかもしれません。
 「村」は行政が決めた区画・単位ですし、地理的にも、南山城村は、農村というよりは、「都市近郊」「郊外」だと思いますし、村民たちのライフスタイルも、市内に住んでいるわれわれよりもはるかに「自動車を多用し大型スーパーに買い物に行く郊外型生活様式」のように見えます。
 ですから、「生業」との関係が希薄な「グリーン・ツーリズム」「農業・自然体験」などの農山村型地域活性化戦略を南山城村に適用しようという意見には疑問を感じます。それは、新たな「フェイク(虚構)」をまた一つ作ることにつながってしまわないでしょうか。(むしろ、村民の生命を守る医師や救急車を増やしたり、独居老人対策や買い物難民対策などのほうが先ではないでしょうか)。
 私たちは「都市近郊」「郊外」という言葉を否定的な意味あいで使っているわけでは全くありません。歴史的にも、宇治茶は「都市近郊」型農業だった、と理解しています。

 2) 私たちが、南山城村の茶業再生というテーマに取り組んだのは、茶業が村を代表する「生業(なりわい)」であり「労働」だからです。私たちは、茶畑で四季折々に営まれている人間の労働にこそ価値を見いだしています。茶業は、地域固有の風土と密接不可分の生業です。(茶業と兼業されることの多い原木シイタケ栽培も、同様に、村の大切な「生業」の一つです。荒れた森林を人間が手入れし「里山」として再生させることにもつながります。)
 村の茶業を持続可能にするためには、川霧、昼夜の寒暖差、そしてそれら自然条件に立ち向かう人間の営みといった、村のお茶の個性の素となっている「地域固有の風土」をまず理解する必要があります。
 「風土」とは、かなり難しい言葉ですが、単に、土地の自然条件を表すのではなく、「自然条件とそれに立ち向かう人間の営みとの間の相互作用の中で形づくられてきたもの」と理解しています。
 ですから、「地域固有の風土」や「産地の個性」も、単なる自然条件の差異に由来するのではなく、「自然条件とそれに立ち向かう人間の営みとの間の相互作用」の差異に由来するものだと言えます。
 このことを、京都府南部の南山城地域で歴史的に発展してきた宇治茶にそくして言うと、
 ① 自然条件がつくりだす寒暖差、霧深さ、
 ② それに人間が適応する中で生みだされてきた覆下栽培法、
 ③ ①と②によって作り出される宇治茶の品質
が、南山城地域を他の地域から区別する「産地の個性」だと思います。
 経済学的には、もう一つ、「市場」も、「風土」を規定する不可欠の要素だと思いますので、
 ④茶の品質・価値を評価する「市場」(問屋・小売・消費者の価値判断)、
も「産地の個性」に含めたいと思います。

 名張川や木津川周辺の地勢がつくりだす村特有の川霧が自然の覆いとなって、お茶の味を旨くしたりまろやかにしたりするようにはたらくこともあれば、春先に大陸からやってくる移動性高気圧が夜間温度を低くさせ凍霜害をもたらし、その年のお茶の出来に深刻な影響を与えたりします。
 毎年毎年、毎日毎日、刻々と変化する気候に適応しそれを適切に管理できるかどうかが、茶農家の腕の見せ所です。「茶業は、自然条件や異常気象との戦い」(南山城村茶ECOプロジェクト・木野理事長の談)です。

 この自然条件に立ち向かう人間の営みの一つが、京都府南部の南山城地域で古くから行われてきた「覆下栽培法」です。
 昨年、日本中世史研究者・橋本素子先生から教えていただいたことですが、ポルトガル人宣教師ジョアン=ロドリゲス日本教会史』(17世紀前半)は、宇治の覆下茶園の様子を歴史上最初に記した書物だそうです。以下、該当部分を引用します。
 「そして使用に供される新芽は、非常に柔らかく、繊細で、極度に滑らかで、霜にあえばしぼみやすく、害をこうむるので、主要な栽培地である宇治の広邑では、この茶の作られる茶園なり畑なりで、その上に棚をつくり、葦か藁かの蓆で全部を囲い、二月から新芽の出はじめる頃まで、すなわち三月の末まで霜にあって害を受けることのないようにする。これから述べるような利益がそこからあがるためと、商取引が莫大なので、霜害を防ぐことに多大の金額を費やす。」(ジョアン=ロドリゲス日本教会史』上、大航海時代叢書IX、岩波書店、567〜568頁)

 


 私たちの連携パートナーであるNPO法人南山城村茶ECOプロジェクトさんが取り組んでこられた「茶ECOかざぐるま」の制作体験は、「地域固有の風土」を理解する取り組みであり、景観を通じて故郷の価値を再認識する「景観まちづくり」の一つだと思います。
 以下、少し長くなりますが、茶ECOプロジェクトさんのホームページより「かざぐるま」の主旨を引用させていただきます。
 「村の特産品であるお茶。その茶畑がつらなる雄大な風景はのどかそのものですが、山間に位置する風土ゆえに、昼夜の気温の差が大きくなります。そこで、茶畑には小型風力発電機のようなファンが取り付けられているのです。
 防霜(ぼうそう)ファン。これは文字どうり、茶葉に霜が降りないように上空の暖かい空気を送りこむためのファンです。南山城村の基幹産業であるお茶は、このような茶葉に対する細やかな心づかいがあって、『煎茶の郷 南山城村』へと発展できた経緯があります。茶畑の風景は、南山城村の人たちにとって、大切な”ふるさとの風景”として胸に刻み込まれています。」
 「私たちは、お茶に関わる立場から、茶葉とファンの良い関係を人に受け継ぎたいと思いました。人の身体に対して、あと1度、体感温度を上げたり下げたりできたら…。暑い夏の日もかざぐるまが回る風通しのよい暮らしを進めて、涼を感じてもらいたいと考えています。このプロジェクトは、茶畑にある防霜ファンをかざぐるまに見立て、お茶の生産風景をイメージしながら、エコライフに貢献することを目的にしています。」

 (茶畑に立つ防霜ファンは、南山城村の代表的景観です。写真は茶ECOプロジェクトのHPより転載)

 (村の夏まつりで子供達と「茶ECOかざぐるま」の制作体験。写真は茶ECOプロジェクトのHPより転載)



 「夏も近づく八十八夜・・・あれに見えるは茶摘みじゃないか。・・・」の歌にもあるように、毎年、新茶シーズンの行われる茶摘みは、村の代表的な景観です。
 今日では、茶の摘採はほとんど機械で行われますが、品評会に出品するお茶は、村の集落総出で手で摘まれます。(ボランティアではなく有償労働の場合が多いです)

(村の煎茶が品評会で毎年のように産地賞を受賞しているのは、村人の丁寧な茶摘みの賜物だと言えます。向こうに見える黒いネットは、宇治茶の旨味を増すために摘採前にかけられる寒冷紗で、今日の南山城地域の代表的な景観の一つです。昔は、ヨシズ・菰(こも)などが用いられていましたが、現在では、寒冷紗が普及しています。このような覆下栽培は、宇治茶の郷=京都府南部の南山城地域の伝統的栽培法です。)


(「ゴールデンウィークは茶摘み!」が村の伝統行事。とても元気な摘み娘さんたちです。私たちも、この2年間、参加してきました(もちろん無償です!)。村の摘み娘さんたちに「自分の孫と茶摘みしているみたいで楽しいわ〜」と言っていただきましたが、私たちも「自分のおばあちゃんと茶摘みをしているみたいで楽しい!」と思いました。お茶づくりは、地域の老若男女すべてが関わることができる素晴らしい地域産業だと思います。)


 Q-2.「雫」の開発・生産・販売活動の中で学んだ「村おこしの難しさ」
 A-2. 一言で言うと、継続性だと思います。
 私たちは、村の「生業」=茶業が年々減少し、南山城村がますます「生業のない・単なるベッドタウン」になっていくことに危機感を持っています。生業のない地域は、廃墟となる確率が高いからです。
 そこで、2009年に私たちは、龍大オリジナル宇治茶「雫」(抹茶入り煎茶)の生産・販売を開始しましたが、2009年の『京都府茶業統計』によれば、南山城村の茶農家数も、煎茶の生産金額も、てん茶の生産金額も、減少し続けています。



 私たちは、村の茶業の新しい芽である「てん茶」(抹茶の原料)を、村の代表的産品である「煎茶」にブレンドし、てん茶と煎茶の両面戦略による茶業振興をねらっていました。たくさんの村の茶農家たちとともに、「雫の生産ネットワーク」のようなものが作れたら、と考えてきました。
 が、地域産業の再生は簡単ではありません。私たちはまだまだ「ほんの小さな風」でしかありません。来年も「雫」をつくり続け、村の茶農家と一緒にもっともっと「大きな風」を吹かせ続けていかなければなりません。
 2010年、私たちは、「雫」のブランド展開を目指して、京都市営地下鉄とタイアップし駅ナカオリジナルスイーツ「南山城村の抹茶ばなな」に、「雫」の抹茶の供給し始めましたが、2010年の生産量や生産金額はどうなったのでしょうか。近々発表される茶業統計の速報がとても気になります・・・。


Q-3.どうすれば地域社会は元気になるのか、
 A-3. これがわかっていたら、私たちは今の研究スタイルを座学・輪読に変える思います(笑)。よくわからないから、今の活動を続けています。
 それでも何かを言わなければならないとすると、
 「その地域に住み・仕事をし・子育てをし・老いた親の面倒をみ・・・、つまりリスクを背負ってその地域に『投資』をし、その地域に重大な利害関係を有している人間が、今後もその地域で生き続けられるようにするために、立ち上がるしかない。このような志の高い人間がいる地域は元気」、
ということではないかと思っています。
 私たちにとって南山城村が魅力的な研究対象なのも、茶業を生業にしている方々が「故郷を良くしよう」と願ってNPO法人を設立して自ら立ち上がっているからだと思います。


 Q-4.私たち学生は、どのようにまちづくりと関わっていくことができるか
  A-4. これが一番難しいです(笑)。「よそ者で通過者的存在である学生に何ができるか」という話だと理解いたします。よく「よそ者・若者・馬鹿者が、地域資源を再発見し、地域を変える」と言われたりしますが、ちょっと「言い過ぎ」だと思います。
 その言葉は、学生のやる気を鼓舞する言葉としてはアリだと思いますが、その取り組みが一過性のものに終わってしまうならば、地域に「迷惑」をかける、という「意図しない結果」をもたらす場合もあるのではないでしょうか。
 また、「よそ者で通過者的存在である学生」に頼りきってしまっている地域が増えていますが、本当に情けないことだと思います。
 私たちは、
 「よそ者で通過者的存在の学生は、地域資源にはなれない」
 「ただし、自らも、自らの学問のためにその地域に投資をし(<金銭>という意味だけではなく<現場で汗をかく>という意味でも)、地域との信頼関係を構築し、綿密な現地調査をふまえ研究成果を活かすことができれば、地域資源つなぎ方を変えることはできるのではないか」
と考え、2007年から活動してきました。
 たとえば、京都・伏見の商店街で南山城村ファーマーズマーケットを開催したり、自分たちも栽培・製造過程に携わりながら大学オリジナル宇治茶を製作したり、京都市内のホテルや市営地下鉄とコラボでお茶スイーツを共同開発したり・・・
 端的に言うと、ムラの地域資源をヨソの地域資源とつないで、新しい用途や販路を開拓する活動です。
 が、地域資源(村)の接続部分と、接続先(他所)の地域資源のことだけを考えているだけでは、「地域固有の風土と密接不可分な生業」を理解することはできないと思います。「風土」も「生業」も、またそれらに関する知識も、その地域社会に住む人々の中に深く「埋め込まれている」からです。外からながめて見ることは困難です。(たくさんの視察団を受け入れている先進地域ならば、フィールドワークを通じて垣間見ることは可能かもしれませんが、そうした地域はごく稀です。)
 傍観者的立場では、生産者は「地域再生にとって本当に大切なこと」を教えてくれませんし、私たちも、生産者の言葉を理解することすらできません。それゆえ、生産者との間に共通認識や信頼関係が生まれず、地域資源の「つなぎ方」も変えられません。
 地域資源の「つなぎ方を変える」ためには、生産者と一緒に共通体験を積み重ねること、言い換えれば、同じ汗をかくことが不可欠だ、と私たちは考えます。そのような意味で、自分たちもお茶の栽培・製造過程に携わっています。
 以上が、村で実際にお茶づくりに携わってみての率直な感想です。
  
 とはいえ、世界金融危機や「就職氷河期」の中で、「こんな小さな村でこんなローカルなことをやっていていいのだろうか」「バイトずくめで、自分の生活もままならないのに、どうしてよその地域の活性化に取り組まなければならないのか」と悩むこともたくさんあります。
 昔は、「学生さんには金はないが時間はたくさんある」と言われましたが、最近では、朝から夜までスケジュールびっしりという学生も多いです。講義に出席しなければ卒業すらできません。夜間にバイトをいれている学生もたくさんいます。

(続きは当日・・・)



 当日は、龍大オリジナル宇治茶「雫」の試飲サービス & 販売もいたします!

 興味のある方は是非ご参加ください !
 午後のシンポジウムでは、国土交通省文化庁京都市金沢市、芦屋市から行政の最前線で景観まちづくりに携わっておられる方々が登壇し、景観まちづくりの現場にある課題や問題点を学生、市民、研究者と行政とが話し合って、将来の景観まちづくりの可能性について議論します。



 詳細は、こちらをご覧ください。