もしも日本茶がワインみたいになったら (ノート)

 自分の勉強のためのノートです。あとで豹変するかもしれません(笑)。引用が多くてすいません。


 ■1■もしも、日本茶が、ワインのように、
 産地の個性 × 品種の個性 × 作り手の個性
を前面に出す「くくり方」をしたら、新しい展開ができるかもしれない。
 
 蒸し方の違いや、覆いをかける日数の違いといった「製法」の違いを強調する既存のくくり方ではなく、新しいくくり方。
そうすれば、多様な組み合わせができ、多様な顧客ニーズに対して、きめ細やかにメリハリをつけて対応できるかもしれない。

 この「くくり方」の中でなら、岩手県陸前高田市の気仙茶みたいなローカル茶がもっと見直されるかもしれない。
 ベニフウキやベニヒカリなど品種を強調する和紅茶も、新たな個性を打ち出せるかもしれない。



 また、合組の技術も「匠の技」として、ウイスキーのように正当な評価をして、
 産地の個性 × 品種の個性 × 作り手の個性 × 合組の個性
とすれば、もっともっと多様な展開ができるのではないか。
 「去年と同じ味・香りをつくる」合組技術だけではなく、「顧客の嗜好にマッチさせた味・香りをつくる」合組技術があってもよいのではないか。もっと、合組技術を「みえる化」してもよいのではないか。


 「ワインのような展開は高級茶の話」と言われそうだが、産地×品種×作り手×合組というくくり方をしたほうが、むしろ、低価格帯マーケットも再活性化できるのではないか。


 では、どうしたら、ワインのように、顧客が「A産地×作り手aのお茶は、B産地×作り手bのお茶と比べて...」と評価してくれるようになるのでしょうか。
 ソムリエに相当する日本茶インストラクターさんが、そのあたりの「うんちく」を丁寧にわかりやすく顧客に解説してくれたら、お茶ライフがとても愉しくなるのではないでしょうか。


 実現できそうな試みとして、新茶シーズンに、ボジョレ・ヌーボー解禁のイメージで、京都のホテル、レストランや料亭で、ワイン・リストならぬ「日本茶リスト」(英語版も)を用意したら、お客様は喜ぶのではないか。
 「じゃあ、僕は、京田辺産の手摘みの玉露を水出しで」
 「私には、本ずで育てられた宇治田原産の玉露を急須で」
 なんて感じで。
もちろん、適正な対価はいただきます。


 「お茶うけ屋」さんのHPで勉強させてもらいながら、最近、こんなことを考えています。あくまで私の勝手な解釈ですので、ご了解ください。(それはそうと、世界緑茶コンテスト2011・最高金賞受賞、おめでとうございます!)


 幸いにして、南山城村にある龍谷の茶畑の品種は、ヤブキタではなく、「おくみどり」。
 何か新しい試みをしてみようか。。。
 自然仕立て・本ず被覆・手摘み・単一茶園の「てん茶」を、抹茶にせずに、「てん茶」そのものの味・香りを活かすとか。。。。


■2■もしも日本茶がワインのように、産地×品種×作り手を前面に出すようになったら。
 茶業界にとっては、厳しい側面もたくさんあります。
 消費者に責任を持って産地・品種・作り手をアピールするためには、なんらかのルールが必要でしょう。
 その一つが「原産地統制呼称」制度です。
 よく知られているように、フランスは、ワインの産地やブドウ品種などの呼称を厳格に法律で規定しています。アメリカでも、「アメリカ政府公認ぶどう栽培地域」が法律に基づいて決められています。


(出所)ナパヴァレー・ヴィントナーズのHP(日本語版)より転載。

 ナパヴァレー・ヴィントナーズのHPから引用します。
 「一概にナパヴァレーといえど、固有なマイクロクライメット(微小気候)や地形の特徴が認知され、その場所だからこそ生まれる明白な特徴が葡萄に、そしてワインに現れます。
 ワイン生産者や葡萄栽培家は、共通した特徴の認められる地域に境界線を引き、その地区を指定する名前、つまりアペレーションを確立しました。
 アメリカ政府公認葡萄栽培地域、通称 AVA(American Viticultural Areas) として認定を受けるには、政府の認定機関にその必要性を裏付けするデータを提出しなければなりません。
“ナパヴァレー”自体もアペレーションの一つです。ナパヴァレーというアペレーションの中に細分化されたサブアペレーション( AVA )が存在します。」



 「固有な微小気候や地形の特徴」。
 地域の人々が地域資源(景観)のもつ価値を再認識して大切にしていく上でも、とても重要な概念だと思います。


 宇治茶についても、以下のようなことが言われます。南山城村の例をひくと、
 「高尾の山と南山城の山は木津川を挟んで、右岸が南山城で、左岸が高尾です。
 同じ川の両岸ですが、味は全然ちがいます。
 値段も味も高尾と南山城ではちがうんです。
 その差は場所のせいやと思います。
 土壌ですわ。」
 (竹村嘉平『宇治茶いい味いい香り』草思社、1999年、102頁)

 ※ちなみに、竹村嘉平氏のメインの主張は、「宇治茶とは何かといいましたら、ブレンドによって引き出された総合力のすぐれたお茶ということでしょうか」(131頁)、「なんで宇治茶がそんなにええのかいうたら、香りと味と色とそれらが、みなきちっと揃っているからですな」(同上)、です。



 日本でも、長野県は、ワインや日本酒、米、焼酎に「原産地呼称管理制度」を導入しています。
 長野県の「認定要領」を見ると、「長野県スティルワインの基準」に基づいて、長野県原産地呼称管理委員会のもとに置かれた「ワイン委員会」と「ワイン官能審査委員会」が基準に適合するワインを認定する、とあります。
 委員会は、生産者・消費者・流通関係者で構成され、「長野県原産地呼称管理委員会」の会長は玉村豊男氏、「ワイン委員会」の委員長は小布施酒造・曽我義雄氏、「ワイン官能審査委員会」の委員長はソムリエ・田崎真也氏です。

「制度の概要」には、次のように書いてあります。
 「農産物の原料や栽培方法、飼育方法、味覚による区別化」として、
 「・制度開始当初は、認定する原産地の区分を『長野県全体』にする。
  ⇒将来的には『原産地の個性・背景』による更に狭い地域での区別化を目指す。(『長野県全体』という範囲は残しながら、更に小さな単位での認定を実施する。)
  ・味覚審査は「旨い・まずい」の基準ではない
  ⇒個性のあるものを排除するのではなく、むしろ、長野県独自の味としてその生産を支援していく方向で運営する。
  ・個性のあるものをこの制度の対象とし、長期的な視野でブランド化につなげていく。」
 『長野県で生産・製造されたもの』を自信と責任を持って消費者にアピール消費者の信頼を得ながら生産者の生産意欲を更に醸成し、長野県産農産物のブランド化を目指す。」


 山梨県甲州市にも、類似の「原産地呼称ワイン認証制度」がつくられています。
 「制度の概要」から引用します。
 「近年、消費者の食品に対する『生産地履歴』への関心が非常に高まっており、原料ぶどうの出自がはっきりとしたワインを日本における一大ワイン産地である甲州市から産出(提供)したい考えからであります。そのワインの出自。つまり、原料ぶどうの収穫地が明確であること。このことを第一義としています。当座の狙いはあくまでそのワインの原料ぶどうについてのトレサビリティーの徹底です。この制度により認証されるワインが消費者から支持される形を目指していきます。」

 山梨県は、山梨大学ワイン科学研究センターなどの人材育成拠点も充実しています。また、国産ワインコンクールの事務局も務めています。

 国産ワインコンクールの開催要項の「目的」を読むと、「国産原料ぶどうを使用した国産ワインの品質と認知度の向上を図るとともに、それぞれの産地のイメージと国産ワインの個性や地位を高める」とあります。
 「認知度の向上」、「産地のイメージ」向上、「個性や地位」向上を目的とした日本茶の品評会があってよいと思います。



3もしも日本茶がワインのようになったら、ワイナリーめぐりならぬ、茶園めぐりもいいですね。ただし、その場合、従来の茶摘み体験とは一味ちがった発想が求められると思います。

 ここでも、山梨県の「ワインツーリズム山梨」の事例はかなり参考になります。引用させていただきますと、

「I. 目的
 以下の活動を「ワインツーリズム」と呼び、その実現を目的とする。
(1) 新しい旅のスタイルの提案
 ぶどうとワインに限らず、その産地にある独自のもの(風土・歴史・文化・生活)を全身で味わう旅のスタイルを広め、定着させる。
(2) 住民が「地域資源」を活用する 産地そのものの魅力は地域住民の財産(地域資源)であることを自覚し、それを自ら活用してより価値の高い地域をつくる。

II. 目的達成のための方法
・ 「ワインツーリズム」の目的が達成され、地域の日常となることをめざすイベント「ワインツーリズム2011」を企画・実施する。

III.「ワインツーリズム2011」の概要
(1) ワイン産地に既にあるぶどうやワインを中心とした営みや活動(ぶどう農家、ワイナリー、飲食店、商店、かつぬま朝市、勝沼フットパス、行政の産業振興、交通機関など)を繋ぎ合わせ、彼らの日常の価値を表現・発表する。
(2) 上記の魅力を楽しむためのガイド資料を制作し、参加者に地域の楽しみ方を伝える。
(3) 散策コース等を設定し、まちに専用の循環バスを走らせ、参加者の自由な散策を補助する。
(4) ワイナリー情報の提供、朝市会場や飲食ブースの設営、ツアーの用意、飲食店の案内により、まちを挙げたおもてなしを提供し、参加者は各自の興味に応じて参加する。・・・・・」



 上のような取り組みを、産地をあげて皆で実施できたら、日本人にとってだけでなく、外国人にとっても、楽しいのではないかと思います。
 ちなみに、静岡県は、「グリーン・ティー・ツーリズム」というコンセプトを提起されていますね。参考にしたいと思います。


 4いずれにしても、日本茶の魅力を世界に発信するために、ワイン業界に学ぶことはとても多いと思います。
 つまるところ、日本茶の「見える化」ではないかと思います。
 「見える化」という言葉は、巷にあふれすぎていて陳腐化しているので、あえて、「観える化」という言葉を使いたいと思います。
 そして、この「観える化」という言葉に、
  ・農の「観える化」という意味と、
  ・観光客を含めた顧客から観えやすくするという意味
を込めたいと思います。

 日本茶の「観える化」 
 日本茶、とくに宇治茶の「観える化」とは、大まかに言えば、
 京都を深く鑑賞したい、味わいたいと考えている顧客(観光客を含む)に対して、
 宇治茶の
 「全体像」(歴史や全体の製品ラインナップ)、
 「他産地との違い」、
 「一つ一つの違い」(玉露、てん茶、かぶせ茶、煎茶のちがい。産地・品種・作り手のちがい)
 を観えやすくすること。


 そして、従来の「農商工連携」を「農商工連携」として、今まで以上に意識して、顧客から観えやすい農商工連携をめざしたいなと考えています。

 蒟蒻問答みたいな話で恐縮ですが、
 従来の、「6次産業化をめざす」農商工連携(1次産業・2次産業・3次産業の連携)は、
 足しても 1 + 2 + 3 = 6、
 掛けても 1 × 2 × 3 = 6。
 つまり、足しても掛けても6で、相乗効果がなかなか現われない、という問題があったように思います。(これは批判ではなく、あくまで自分達のやってきたことへの自戒です。あしからず。)

 問題は、「1」の存在です。
 一つは、1人もしくは1戸でやる6次産業化は、スケールメリットがでず、採算がとりにくいこと、
 もう一つは、1次産業の「農」に対する顧客の「まなざし」を十分に意識してこなかったこと、
にあるような気がします。
 農を「観える化」して、たとえば、1から1.1にすれば、相乗効果が現われるのではないかと思います。
 つまり、
 1.1 + 2 + 3 = 6.1 
 1.1 × 2 × 3 = 6.6
です。


 ■■ 話が宙に浮いてきたので(笑)、戻します。日本茶を本当にワインみたいにしてしまった事例もあります。
 ロイヤルブルーティージャパン(株)の「MASA」
 うーん、これはすごい! 
 つきぬけてますね。

 カリフォルニア・バークレーのレストラン「シェパニーズ」でのレポートは、とても興味深いです。











 カリフォルニア・ナパヴァレーのワイナリーです。

参考HP:
  ワイン・インスティテュート(日本語版)、(英語版)、
  ナパヴァレー・ヴィントナーズ(日本語版)、(英語版)
 Vins de France (日本語版)