高田松原・津波・防潮堤 (4)

 高田松原を守る会は、2013年6月20日、岩手県知事に対し、『三陸復興国立公園内「高田松原」の東日本大震災後の残った砂浜に関する要望書』を提出しました。
 以下は、抜粋です。

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 東日本大震災から2年が経過して残された砂浜には、「自生した松の幼木」が数本、また、「ニッコウキスゲ」などの貴重な植物群も芽吹いており、砂浜の新たな形成の可能性もあり、学術的な視点からも貴重な砂浜であると考えられます。
 この砂浜の近傍には「奇跡の一本松」のモニュメントがあり、陸前高田市の新たな観光スポットとして多くの人が訪れております。僅かに残った砂浜には「松」の倒木の様子や根も生々しく残されており、「奇跡の一本松」と連動して活用できる場所でもあります。
 以上のような観点から、「高田松原」の残された砂地は現在の状態で保存・管理していただくことを要望いたします。

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 『岩手日報』6月28日付は、下記のように伝えています。

 「陸前高田市高田松原を守る会が保存を求めていた高田松原の砂浜について県は27日、現地で説明会を開き、一部を保存する方針を示した。保存するのは幅10メートル、長さ10メートルの区域。説明を受けた守る会は保存面積の一層の拡大を求めた。
 説明会には同会会員ら約20人が出席。県は高田松原に海面高12.5メートルの防潮堤を整備するため、砂浜は防潮堤の一部や工事作業スペースに活用する計画だった。要望を受け第1線堤と第2線堤の間の幅10メートル、長さ100メートルは保存できることを伝えた。
 同会が保存を求めている砂浜は『奇跡の一本松』に近く、松原大橋から南西約2ヘクタール。津波でねじ切れた松の幹、露出した根などが残り、これらを『津波の恐ろしさを後世に伝える物証』と訴える。」(岩手日報6月28日付)




 上の写真の右手のほうに紅白のポールが見えていますが、これについては後ほど説明します。




この紅白のポールと黄色いテープで囲まれた区域(幅10メートル×長さ100メートル)が、「守る会」の要望を受けて県が7月27日に「保存」の意向を示した場所です。


 関係者の説明によると、盛土(仮置)の高さが約12メートルだそうです。かなり高いです。

【追記】
 8月6日の岩手日報によると、県は、8月5日、高田松原を守る会に、「一部保存は困難」と回答したそうです。
 以下、岩手日報を引用します。
 「陸前高田市高田松原を守る会(鈴木善久会長)が一部保存を求めていた高田松原の砂浜について、県は、5日、防潮堤工事や松原再生のため、『保存は困難』と同会に回答した。市は映像記録や被災松の根の保存を検討することを伝えた。
 同市役所で、県と市の担当者が鈴木会長らに伝えた。説明によると、県は高田松原の防潮堤工事のために、被災した松や砂浜が残った部分を資材置き場として活用する。
 幅10メートル、長さ100メートルの区間を残せる可能性があるが、その区間も防潮堤工事の進行に合わせて松原再生を進めるため盛り土して、植林する。現状のまま残しても腐敗の懸念や、くぼ地となり松林再生の障害になるため、保存は困難と判断した。
 同会は、津波でねじ切れた松の幹、露出した根が残る部分を『津波の恐ろしさを後世に伝える物証』として保存を求めてきた。鈴木会長は『津波の恐ろしさを伝える現物が残っているので(保存できないのは)残念だ。会で今後の対応を話し合いたい』と述べた。」
 
 
 東海新報8月6日付では以下のように報じられています。
 こちらのほうが岩手日報よりも詳しいです。
 以下、引用します。
 砂地保存「できない」 松原を守る会に県、市  要望に回答、代替案提示も
 東日本大震災後も一部残る高田松原の砂地約2ヘクタールの保存を求めてきた高田松原を守る会(鈴木義久会長)は5日、要望を行った県や市から説明を受けた。
 県側は今後一年程度残すのは、従来回答と変わらず中心部分の約1000平方メートルと説明。26年度以降は松原復元のため、この部分も盛り土する方針を掲げた。市は映像記録としての保存に加え、マツの根や砂保存を検討する姿勢を示した。
 松原大橋から「奇跡の一本松」間にある砂地約2ヘクタールは、震災で壊滅的な津波被害を受けた中でも残り、ねじ切れたマツの根元部分もある。同会は6月、自生する植物保全被災の恐ろしさを語り継ぐ空間として、現状のまま保存・管理するよう求めてきた。
 県は同27日、防潮堤整備に伴うクレーンやトラック車両の作業道確保などのため、中央部の南北10メートル、東西100メートルの保存が限度と説明。同会は、防潮堤法線の設計を含め再考を迫っていた。
 説明会は陸前高田市役所で開催。守る会と県沿岸広域振興局大船渡土木、農林振興両センター、市の職員ら計30人が出席した。
 土木センターでは6月の説明と同様、中心部の約1000平方メートルのみを当面保存する方針を掲げた。農林センターは将来植林を行うため盛り土を行う必要があるとし、砂地保存はできないと回答した。
 市は代替案として▽映像記録として保存する▽松の根そのものを保存し、将来的には広く目にふれるよう検討する▽砂も可能な範囲で保存を検討する―を示した。
 農林センターは来年度にも、第一線堤と第二線堤間で盛り土を行いたい考え。盛り土は地下水などの影響を考慮し、マツが根付く土壌を確保するための施工。1000平方メートルを"くぼ地"として残しても、将来的には松林の生育に影響を与えるとみている。
 鈴木会長らは改めて、保存への再考を要望。会員からは「砂地を見ている人は少ない。1000平方メートルの部分は市民の意見を聞いた後にどうするかを決めればいいのでは」「防潮堤の説明があった時期は自分の生活に余裕がなかった。今やっと落ち着いて考えらるようになった中、もう少し市民への説明が必要なのでは」といった声も寄せられた。
 県ではまず、残っている砂地よりも東側で施工し、市とともに代替案実施に向けた検討を進める方針。同会では今月中にも運営委員会を開き、今後の対応を協議する。(『東海新報』2013年8月6日付)

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【追記】
 8月25日に「高田松原の復興を考える有志の会」主催で意見交換会が開催されました。東海新報の記事は、こちらです




【参考】

高田松原、現状保存を 『守る会』、県に要望書 実現ハードル高く」(毎日新聞)

高田松原クロマツ 津波被害乗り越えて 『守る会』」が確認(東海新報)

東日本大震災津波による岩手県沿岸部の希少植物に及ぼした影響の調査結果」(岩手県環境保健研究センター、2012年7月26日)

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