陸前高田合宿レポート(4回生)〜エゾイシカゲ貝 (1)

宗さんのレポート

 今回で4回目の陸前高田
 前回6月は気仙茶の茶摘みが主だったが、今回の合宿では、エゾイシカゲガイの養殖の手伝いを中心に作業を行った。
 4回目の合宿で初めて漁業に参加し、陸ではなく、海で活躍する漁師さんのお話を聞き、陸とは違った悩みやそこで働く人の考えを聞くことができた。

 福伏の漁港では、家族ごとにテントが分けられており、私はその中のKさん家族にお世話になった。

 私が主に行ったのは、一年目の貝の選別と、貝が入る容器の洗浄だった。


 今までに写真やレポート等ではエゾイシカゲガイを見たことがあったが、実際に稚貝を選別していると、手の中でぴょんぴょんと飛び跳ねて逃げる姿は、衝撃を受けた。

http://d.hatena.ne.jp/ryukoku-cha/files/ezoishikagegai-2013.9%282%29.MOV?d=.9%282%29.mov
 驚く私に、Kさんは、
「こんなの見たことないだろう(笑)」
と嬉しそうに話してくれた。
 Kさんは、春には昆布とワカメを行い、あとはエゾイシカゲガイの養殖を行っている。


 昨年9月の合宿では、ムール貝と同じぐらいの数の稚貝があり、ムール貝をよける作業がメインだったが、今年は大雨や泥の影響で、エゾイシカゲガイの稚貝が死んだり、育たなかったりしたため、数が少なくなり、ムール貝の中のエゾイシカゲガイを探す作業だった。


 それでも、稚貝は1年間で約1.5センチから1回り大きくなり、2年と数か月で現在の4.5センチの大きさになる。
 貝を見ると年輪のようになっていて、大きくなっているのが分かる。
 来年の出荷までには5.5センチくらいになると教えてくれた。


 印象に残ったことがある。
 それは、
「復興が進むのは嬉しいけれど、漁師としては複雑」
と言うことだ。
 去年は工事車両なども少なく、海の環境が良く、稚貝も多かったが、今年は復興工事が進むにつれ、泥が容器の中に入るようになり、本来はサラサラで生活していたのに、泥が入ると貝が窒息してしまい、稚貝も少なくなってしまった。

 山と川と海はすべて繋がっている。
 海で起きている変化は海の問題だけではなく、山では高台移転のため山を切り崩すことにより、泥が川に流れ、そのまま海に流れることでエゾイシカゲガイへ影響も出てしまう。
 これから養殖をする上で、このような海の変化の問題は、復興が終わるまで解決しないのかと思うと、複雑な心境だった。

 このような問題もあるが、今、漁師さん達は、来年のエゾイシカゲガイの出荷に向けて頑張っている。
 漁師さん達は、エゾイシカゲガイを食べたことが無い人に、どのような特徴で、どのような味なのか伝えようかと悩んでいた。

 私が思うエゾイシカゲガイの魅力:
 ・特徴のある動き、
 ・生貝はかめばかむほど甘味が出てくる、
 ・茹でたら、身が引き締まってプリッとした触感に変化する、
 ・うま味が溢れだす。小龍包みたい、
などと、漁師さんに言うと
「やっぱり甘く感じるか、第三者の意見も大切だ」
と言っていた。


 やはり、見たり食べたりしないと、この貝の魅力は伝わりにくいので、どのようにPRしていくのか難しいと感じた。
 来年から築地市場に出荷されるので、どのように全国へ広がっていくのか楽しみだ。
 そして、私も、数少ないエゾイシカゲガイを味わったことのある人間の一人なので、出回った時には、周りの人にその魅力を伝えたいと思った。



 エゾイシカゲガイの話だけではなく、家族の悩みも聞いた。
 お母さんのAさんは、息子に嫁いだお嫁さんのSさんに、
「漁業は汚れるし、体力的にもきつい仕事だから、やらせて良いのかなと思った」
と言っていた。
 2児の母でもあるSさんは、
「わからんことばっかりだったけどね。とにかくやるっきゃなかったね」
「でも、こっちに来てから、アトピーや体調も良くなった」
と言っていた。
 2人とも、
「家族でやっているから人間関係で悩むことやストレスはないし、美味しいものを獲って来て、いつでも食べられるのが漁師の特権だ」
と話してくれた。

 Sさんにも悩みがあり、
「子供は家でゲームばかりで困っている。外は自然がいっぱいで遊ばせたいけど、ダンプがたくさん通るから心配」
「安心して子供を遊ばせられる環境がない」
と教えてくれた。
 今までは、一方の意見を聞くことが多かったが、家族間でのやり取りを聞くことができて、家族がお互いに思いやりながら生活しているのだなぁと感じた。

 最後に、Aさんは、
「汚れるし、重労働で大変でしょ、自分たちの仕事は若者には好かれない」
と言っていた。
 汚れるし重労働だと思う人も中にはいると思うが、私は、作業をしていて、それ以上に、自然の中で仕事ができることや、ふだん何気なく口にしている食材がどのように育てられているのか知ることができて、とてもうれしかった。
 NHKの「あまちゃん」のように、テレビで取り上げられると有名になるのだけれど、エゾイシカゲ貝そのものの魅力は、食べたり感じたりして初めて良さがわかると思うので、もっと、いろいろな人に知ってもらい、体験できる機会があったら良いなと思った。

 5日間お世話になったが、
「またいつでも浜においで」
と言ってくださった。

 大きくなったエゾイシカゲガイ、そして漁師の皆さんとの再会が楽しみだ。

 初めての漁業体験だったが、漁業の良さや、浜で働く人の考え方を勉強できた5日間だった。

(文責:宗)



寺本くんのレポート
 9月9日から9月15日までの一週間行った、エゾイシカゲガイの養殖のお手伝いの報告をします。

 現在、要谷漁港では、5つのテントが養殖をおこなっています(うち一つはカキの養殖)。各テント5〜6名で作業をされています。
今回、私はその中でも、OさんのテントとKoさんのテント、Kuさんのテントでお世話になりました。

 9月9日は、Koさんのテントで発泡スチロールの容器のヘリをとる作業を手伝いました。

 このヘリについては、(1)接合のため、(2)逃げないにするため、(3)他の仕掛けに使われていたものを転用したため、という話を聞きました。
 しかし、このヘリは洗う際に邪魔になる、引っ掛かって発泡スチロールがもげてしまうなどのデメリットがあるため、除去することにしたそうです。
 次回は、ヘリがついていないものを発注するそうです。

 この日は、2年目の貝の引き上げを行いました。
 昨年よりも大きくなった貝は、独特の舌を出してピョンピョンと飛び回る動きも、稚貝の時よりも力強く、たくましい貝に成長していました。
 手に持ってもピョンと逃げる様子は、この貝の栄養価の高さを想像させます。
 実際に食べさせていただくと、歯に心地よいコリコリとした食感と、深い甘みが口一杯に広がりました。



 9月11日〜13日は、Oさんのテントで砂替えの作業を手伝いました。
 私は主に、仕掛けの分解、洗浄作業と、船から仕掛けを降ろす作業を手伝いました。
 仕掛けの分解、洗浄は、貝に栄養を十分に行き渡らすのに必要不可欠な作業です。
 仕掛けを降ろす作業では、仕掛けの重さを再認識し、それをやすやすと行う海の男の逞しさに驚きました。
 また、仕掛けをほどく際に、私はほどけず何度か詰まってしまったのですが、一緒にほどいていたお母さんたちは、手早く正確に行っていました。
 その手際の良さに恐れ入りました。


 9月15日は、Kuさんのテントでお手伝いをした後、カレーとエゾイシカゲガイそしてワカメの味噌汁、刺身を頂きました。
 このワカメは、いままで食べていたものとは大ちがいでした。
 お土産としていただきました。味噌汁や和え物にしておいしく頂いております。
 お求めは有限会社やまひろまで!


 私が昨年と比べ大きく変化したと感じたことは、工事現場とダンプカーの増加です。
 このこと自体は復興へ向かっているということで、大変喜ばしいことなのですが、貝の養殖にはマイナスの影響を与えているようです。
 というのも、工事現場で出た泥が仕掛けに入り、貝の成長の妨げとなっている可能性があるからです。
 仕掛けの中に詰められた砂はサラサラとしています。
 しかし、この泥はドロリとしており、貝の呼吸や幼生の着床に悪い影響を与えることが考えられます。
 実際に、昨年度と比べ、稚貝の入りが悪かったそうです。

 高台移転のための造成工事のために地肌がむき出しになっている山をいくつか見ました。
 『森は海の恋人』の畠山重篤さんの言葉が思い出される場面がいくつもありました。


 雑談の話題に、東京五輪の話がでました。
 お話を伺うと、「うれしい反面、五輪で復興が後回しになってしまうのではないかという不安が大きい」とのことでした。
 現在、復興需要で、生コンなどの資材や人件費が高騰しているそうです。
復興で仕事が増えた反面、諸経費の高騰で建設業界も利益が上がらないというのが現状のようです。
 東京五輪の招致決定により高騰に拍車がかかってしまい、復興に悪影響がでてしまうのではないかと心配しています。


 エゾイシカゲガイは、ついに来年の夏、出荷を開始します。
 市場名は「石垣貝」と言いますが、「イシカゲガイ」の名前が伝わる段階で「イシガキガイ」と変化していったそうです。
 主に高級寿司ネタとして食べられており、深い甘みが口に広がるとても美味な貝です。
 現在、東京の築地、愛知そして大阪に売り込みに行っているそうです。
 現在は協業体制にあるので、水揚げ金額は、各テントが出しているイカダの割合で決定するそうです。



 稚貝が着床するか心配されていた2012年の冬から、ここまで大きくなった貝をみて、自分のことのようにうれしかったです。


 しかし、震災から2年半たった今、様々な問題を抱えていることがわかりました。
 国の補助金の問題をはじめ、3年目というのは大きな山場になりそうだと今回の合宿で感じました。
 3年目の今だからこそ、今の形にあった支援策が不可欠などではないかと感じました。


 今回の合宿で、私は、陸前高田の方々の大きな優しさに触れました。
 「こっちさ来て けー」「これも けー」
と私をねぎらい、たくさん御馳走して下さった漁師の方々。
 手作りの漬物や、カレー、お菓子など一つひとつがとても美味しく力がわきました。


 また、菊池会長をはじめ気仙茶の会の皆様には、貴重なお話や楽しい場を提供してくさり、ありがとうございました。お茶への関心がより高まりました。


 そして、私が様々な場面で困っている時も、とても親切に私を助けて下さった陸前高田の皆様、感謝の気持ちでいっぱいです。


 このように様々な優しさのおかげで有意義な合宿になったのだと思います。

 改めまして、本当にありがとうございました。

(文責:寺本)


【参考】

 2012年2月合宿の作業風景はこちら(ずっと下のほうに写真があります)。
 2012年7月の訪問時の様子はこちら
 2012年9月合宿の作業風景はこちら
 2013年2月合宿の作業風景はこちら