陸前高田合宿レポート(4回生)〜エゾイシカゲガイ貝 2)

奥田くんのレポート
 一日目(9月9日)
 午前10時前に要谷漁港に到着。

 震災以前にこの地で養殖が盛んに行なわれていたエゾイシカゲガイという2枚貝の養殖作業のお手伝いをさせて頂くことが、この合宿の活動の一つである。

 1日目の作業は、メンバーが二手に別れての作業となった。
 私たちのグループは、他に田辺、宗の3人。
 AさんとBさんが運営している2つのテントがあったが、私たちはBさんのテントでご夫婦、息子さん、いとこにあたるCさん、それにパートのDさんとEさんのメンバーで作業を行なった。


 最初に行ったのは、仕掛けの網を外す作業で、ボウル型の発泡スチロールと網、ビニールの3つのパーツに分解した。
 作業の手順としては、網に付属している緑色のヒモを引っ張ることで網全体をゆるめて、金具ごと網を発泡スチロールから引きはがす。
 その際に、ビニールもひっついてくるので、引き離して分解する。
 作業時のコツをBさんから教わったが、ムール貝が大量に付着しており見えにくくなっているので、ボウルを立てにすると見やすいということ、そして金具と網をはがす時には膝で底面を押し上げるようにして一気に引きはがすことで解体するとスムーズに出来るというアドバイスを受けた。
 最初のほうは少し手こずる部分もあったが、慣れていくうちに力加減などもうまく調節することができるようになった。


 仕掛けの解体作業を終えて、次に、網を外した発泡スチロールを洗う作業に移った。
 ボウルの汚れを取るという単純な作業ではあったが、力を入れなければ汚れが取れないのでしっかりと力を入れながら、こびりついた汚れを取っていった。


 お昼の休憩の時間には、エゾイシカゲガイを食べさせて頂くことになり、メンバーで実食した。
 茹でているものと生のものの2種類を頂いたが、茹でているものは一口噛むと汁がピュッと出て、口の中にうまみが広がった。
 生で食べたものは苦みが一切無く、甘い香りと、固すぎず歯ごたえのある食感がエゾイシカゲガイの風味を引き立てていた。
 生育状態としては、1年前に養殖を開始した時のエゾイシカゲガイが約4.5センチの大きさに育っており、かごを見せてもらった時にも、生き生きと自由に飛び跳ねながら泳ぐ姿を見ることができた。
 また、今年の入れた貝は1センチちょっとではあるが、少しずつ大きくなっているようだ。
 去年入れたものは、順調に行けば来年のゴールデンウィークあたりには出荷が可能になるそうで、既に東京・築地市場の方と出荷に向けた話を進めているという話も出ていた。


 こうして順調にエゾイシカゲガイが以前よりも大きくなってきている現状でも、復興工事が少なからず養殖業に影響を及ぼしているという点も見逃せない部分である。
 特に、Bさんたちが口をそろえて言っていたのが、
「復興工事が養殖に良くない影響をもたらしている」
ということである。
 工事によって泥が海へと流入し、養殖している貝に覆いかぶさり、呼吸が出来なくなり、結果的に死んでしまう可能性があるようだ。
 昨年に比べて工事も進んできており、それに伴い今年のエゾイシカゲガイの生育状態にも影響が出ている。
 また、工事で山が削られることで栄養が川をたどって海に流れることができなくなってしまってもいるので、そちらの状態も芳しくないようだ。
 1年後、3年後など長期的な視点でみると、このまま養殖が続けられるかどうかも先行きは不安な状態であるようだ。



 三日目(9月11日)
前回の作業と同じ流れではあったが、仕掛けの分解は、前日と比べてかなり早く分けることができるようになったと感じた。
 特に、膝を使って外す部分が楽に出来るようになったのは、進歩ではないかと思う。



 四日目(9月12日)
 昨日に引き続き要谷漁港での作業。
 Aさんのテントをお手伝いすることになり、田辺と2人で手分けして作業を行なった。

 まず始めに行なったのが、仕掛けを沈める際に使用したブイを洗う作業。
 使い終わったブイには藻くずや貝などが大量に付着しており、その付着物を鎌のような形をしたへらを使って削り取っていかなければならない。
 特に藻くずはブイにこびりついてなかなか取れないため、しっかり力を入れなければならない。
 またブイに繋がっている綱にも大量の藻くずが付着していてそれも思い切り削らなければ取れないので、かなり握力や腕の力を使う作業となった。 


 午後からは、これも初めての作業になったが、仕掛けに砂を入れる作業である。
 はじめに、既に組み立てられている仕掛けを用意する。
 1個ずつ砂を入れて積み上げていく形になるが、3個に1回、綱を結びつけて仕掛けが繋がるようにしなければならない。
 3個で1セットという形で、それを2セット重ねて行く。
 合計6個の仕掛けが重ねられている状態をいくつも作っていかなければならない。
 作業のフローとしては
 バケツに砂を入れる(バケツ1個に4リットル程度)、
 バケツに入った砂を仕掛けに入れる、
 仕掛けを重ねていき、3個に1度仕掛けのひもに綱を結びつける。
 6個仕掛けを積み上げたら次のセットへ。

 このような流れで各作業を分担して行なった。
 私と田辺の2人はバケツに入れられた砂を入れる作業を行った。
 この際に注意しなければならないのが、仕掛けに張られているビニールが砂でしっかりと押さえられているか確認すること。
 その点に注意しながら砂を次から次へと入れていった。


 分担して作業している中でも、おばちゃんたちは、作業をどんどん進める私たちに、
「無理せんでいい」
「風っ子さ浴びな〜」
というような穏やかな雰囲気で、それでいながらテキパキと作業を進めておられた。
 余裕を持ちながらもしっかりと作業が出来ているところは、さすがプロだなと感じた。
 むしろ、無理している感じが見透かされていたのかもしれない。


 その作業を終えると、次は仕掛けに使用する発泡スチロールの切り取りの作業を行なった。
 この発泡スチロールには出っ張りがいくつかついているのだが、それが仕掛けを沈めて養殖を行なう際に邪魔になるという判断をしたために、切り取ることになった。
 この出っ張りをカッターで切り取っていくことで平らな状態にして仕掛けを使いやすくしていく。
 発泡スチロールを縦にし、足で固定しながら切り進めていく。
 しっかり切れ込みを入れなければ手で取れないので、この作業もそこそこ力が必要となる。
 特に手先の力をものすごく使うため、手首などに負荷がかかった。
 コツを掴んでいくことが難しい作業ではあったが、少しずつ慣れていけるように、どうやれば効率よく上手く出来るかを考えながら、黙々と作業を進めていった。


 一日の作業を終えた後は、全員で車屋酒場さんにて食事を行なった。
 他のメンバーから「ホルモン鍋が美味しい!」と聞いていたが、ホルモンはもちろん美味しく、さらにスープもあまり濃くないので、それだけで飲める感じであった。
 こちらで新たにスタートしようとしている人たちの料理を頂くことで、次の日の作業へのエネルギーを蓄えることができた。




 五日目(9月13日)
 要谷漁港にて作業を行う。
 今日も引き続きAさんのテントで作業を行なったが、流れは前日とほぼ同じで、午前中にブイに付着した貝などを取る作業、午後は発泡スチロールの角取りを行なった。

 特に発泡スチロールの角取りは、回数を重ねていくうちに、どのようにすれば効率よく切り取る事ができるかを考えながら進めていけるようになった。
 やはり、これも、仕掛け外しの時と同じく、力を入れすぎないこと、そしてまとめて切り込みを入れて最後に角をまとめて取ることで作業のスピードを早くでき、より多くの発泡スチロールを切り取ることが出来た。


 また、この日印象的に残ったのは、休憩中に聞いていたおばちゃんたちの話だ。
 話と言っても内容のことではなく、話している言葉についてである。
 合宿では気仙茶と漁港の作業を行っていて、どちらの人も陸前高田の言葉で話しておられるのは当然なのだが、漁港の人たちは、気仙茶で関わる方達とはなまりのレベルが格段に強い。
 口調が激しいというか早口なのが特徴で、特におばちゃん同士で話している時は流れるようにスピーディーに会話を成立させてしまうので、単語を聞き取るだけで精一杯になってしまう。
 意味を理解するのも大変で、間の手を入れるタイミングも難しいため、聞く一方になることが多く、笑いどころで何とかあわせられる程度だった。
 もっと聞き取れるようにならないと会話も成り立たないし、通じ合うことは出来ないだろうなと感じる場面だった。




七日目(9月15日)
 今回の合宿最後の作業日。
 要谷漁港にてBさんの作業をお手伝いさせて頂いた。
 私と田辺は仕掛け外しの作業、残りの4人が稚貝の選別を行なっていった。


 この仕掛け外しの作業もだいぶ慣れてきたが、この日になってようやく気づいたのが「力を抜くこと」で外す作業がスムーズに行なえるということだった。
 網が引っかかって無理矢理外そうとすると動かないことが多く、逆に力を抜いて網を広げていくとスッと外れるようになる。
 それに加えて余計な力を腕に入れない分、体力的にもすごく楽になっていくし、大量にある仕掛けをすべて外そうと思えば、力を入れるよりも抜きどころを心得ておいたほうが作業を進めていく中では適している、というのを恥ずかしながら最後の最後で感じた。


 作業は午前中で終わり、最後にはB家の手作りカレーやわかめ、エゾイシカゲガイをごちそうになった。

 最初のほうは、作業の時も休憩の時でも、いつも色々な方に与えてもらうばかりで、正直申し訳ない気持ちが生まれていたし、その分に応えられているかどうかといえば、全く足りていないと思っていた。
 しかし、食事を終えて漁港を後にする時には、Bさんやパートのおばさんたちから、
「またここにもおいで」
との言葉を頂いたことで、少しでも力になれたのかなと思えるようになった。


 次に陸前高田に行くのはいつになるか分からないが、絶対に戻りたいと、4日間の作業を通してそういった想いにさせていただいた皆さんに感謝の気持ちでいっぱいである。




この合宿を通して
 前回、私が陸前高田で活動したのが昨年の9月で、ちょうど1年前のことだった。
 それから1年が経ち、それぞれの活動の中で少しずつ変化が現れてきたと思う。
 特に漁業の活動ではエゾイシカゲガイの養殖が進み、来年の出荷に向けた動きが始まりつつあるということ。
 震災被害を受ける前は築地に向けてのみの出荷だったが、次はそれ以外の出荷先も模索しながら新たな販路を掴もうとしている。
 ただ、今復興の真っ最中であり高台移転の工事が毎日のように行なわれている中で工事の際に削られたりした海に土が流れ込み養殖が上手く行かない環境が作られているのも現状にある。
 お互いに復興への道をたどりながら利害関係が生じてしまうということに複雑な心情になってしまう。
 それでも一人一人が自分の生きる道として、養殖業という選択肢を取った事に対して後悔の色は一切なく、とても穏やかにけれども強い意志を持ちながら日々の暮らしを作ろうとしているのだと思う。
 いずれの活動においても自然とともに歩んでいくことを生きるための糧としていることを自分自身の体をもって感じるとともに、常に津波を受けたその土地で生き続けることに対する覚悟や重みを感じた。
 高台移転工事などは進んでいるといっても、まだ数年先まで時間がかかってしまう。
 そして高台に移転したとしても、震災が起きたという事実が変わる訳ではないからこそ今回訪れた景色を、そしてこれまでに訪れた時の景色を目に焼き付けておかないといけない。
 2年間活動を行なう中で、陸前高田という地は自分自身がこれから生きていく中でも見続けなければならない景色になった。
(文責:奥田)





田辺君のレポート

 今回、僕にとっては、まだ貝を見ていない、稚貝が入るかさえわからない状況での2012年2月に作業した仕掛け作りから約一年半ぶり。
 無事に稚貝が入り順調に成長した約4.5センチのエゾイシカゲガイの仕掛けの砂入れ替えの作業。
 稚貝が入ったことや、その稚貝が成長した姿、作業の途中経過等は他のゼミ生の報告で知ってはいたが、実際に海から揚げられた仕掛けの中にエゾイシカゲガイが入っている姿をこの目で見た時、
「あの時作った仕掛けにちゃんと入っている」
と感激した。

 手に取って海水から揚げてみると、エゾイシカゲガイの特徴である足を「ぴょーん」と出し、手から元気に跳躍し飛び出していくその姿は、力強く愛らしい姿だった。
 今年採れた、とても小さな稚貝や、一年目の約1.4センチのエゾイシカゲガイもおり、小さいながら「ぴょんぴょん」飛び跳ねる姿は、エゾイシカゲガイの力強さを見ている様であった。

 しかし、今年はエゾイシカゲガイが少なくムール貝が多いのだとKさんに教えていただいた。
 例年よりも少ない理由として、仕掛けに泥が入ってしまいエゾイシカゲガイが窒息してしまうそうだ。
 原因として、復興工事が影響しているのでないかとのことだが、海の状況が変化しつつあるのだろうか。
 もしも工事が原因であるならば、「水は山から川へ流れ、川は海へと流れる」と山・川・海は繋がっているので、復興のための工事とはいえ、海を相手とする漁師の人々の収入源に悪影響を与えることはとても複雑である。


 漁港の堤防に釣り人を何人か見た。
「日曜日になるとここに釣り竿が並ぶよ。釣り竿持ってきたら良かったね」と、町ではまだまだダンプが道路を走り、重機も多く、仮設住宅に住む人も未だに多くいる状況で、目に見える復興はまだまだ先なのではないかという印象を受けたが、上手くは言えないが、釣り人に対する意見からそう感じた。

 また、二日目の作業際、隣のテントの漁師さんが朝5時からボートで釣りに行き、ヒラメ約50枚の釣果。

 その場で捌いて刺身にしていただいたヒラメは何とも言えず絶品だった。

「海の幸をその場で食べる。これも漁師の良いところの一つだなぁ」
と思った。

 作業の休憩中、エゾイシカゲガイを食べさせてもらった。
生はコリコリとした食感が何とも言えず、甘くて美味しい。
 茹でたものは、味、旨みが凝縮され、噛んだ時一気に「じゅわー」と口の中に広がる。

 どちらもとても美味しく「当分大阪に戻って貝は食べられないな」と思うほどであった。
本当に美味しいものを食べたとき人は笑うしかない、自然と笑顔になると言うことが良くわかった瞬間であった。
 食べるとその美味しさあまり幸せな気持ちになる貝、それがエゾイシカゲガイだと思った。
 また、皆さんと談笑しながら食べる、「誰かと一緒に」ということがより一層美味しさを引き立てるのだと思った。

 また、仕掛けの中にはエゾイシカゲガイに良く似たトリガイも交じっており、成長スピードがエゾイシカゲガイよりも速いとのこと。
トリガイも始めようかと思っている」とのことだったが、自然採苗なので、安定して採ることがなかなか難しいとのこと。

 トリガイは少し毛が生えており、白い色をしている。

 最終日は、台風の影響を受けない様に、午前だけ作業をし、設備を片づけて終了した。
 以前は二階建ての建物で作業できるようになっていたとのことであったが、今ではまだ地盤沈下したままの漁港にテントを建てただけになっているため、波が陸地まで上がってくるとのこと。
私は、「来年無事に出荷されたエゾイシカゲガイが築地や他の市場で並んでいるのを見てみたい」
「この貝の美味しさをもっと色々な人達に知ってもらいたい。出荷された後は以前の様にしっかりとした施設で作業が出来る日が来るまでずっと関わっていきたいと」
そう強く思った。
(文責:田辺)




【参考】

 2012年2月合宿の作業風景はこちら(ずっと下のほうに写真があります)。
 2012年7月の訪問時の様子はこちら
 2012年9月合宿の作業風景はこちら
 2013年2月合宿の作業風景はこちら