陸前高田合宿レポート(4回生) 〜Aさんのこと

永井
 9月9日、Aさんに会いに行った。
 Aさんは、仮設住宅を出て、引っ越すことができた。
 仮設とはちがって、気持ちのいい風や日が差し込む部屋は、以前より居心地が良さそうだ。

 今回は、家が流されてからの話、仮設での話、引越してからの話、Aさんの昔の話、また傾聴ボランティアでの話など、たくさん話を聞いた。



 家が流された3月11日の晩は、親戚の家にいたそうだ。
 「申し訳なくて仕方なかった」
と言う。
 居候する側もされる側も、ストレスが溜まってしまうのだ。
 コンビニには、一回500円のシャワーが3台あった。
 お風呂がほとんどないから、いつもいっぱい並んでいたんだとか。


 忘れかけていた。
 「日常」を失った人の毎日を思い出した。
 たくさんの人が、家を失い、避難生活を強いられたのだ。
 もちろん、好きな服を着ることも、好きなものを食べることも、好きなところにも住めない生活を強いられていたのだ。
 今は仮設住宅に移っているが、そこでの生活はけっして良いものではなくて、まだまだ仮設を出ることができない人もいて、町もなかなか復興が進まない。
 そんな中、東京オリンピックが決まって。
 どうも喜ぶ気持ちになれない。


 Aさんは、今、仮設を出て、別のところに住んでいる。
 「障子を開けると空が見えるのが嬉しい。仮設にいると窒息してしまう」
と言っていたことが、震災以降、衣食住を奪われていた人の、心からの言葉なんだと感じた。
 そう、まだ、衣食住を失われたままの人がたくさんいるのだ。



 ある仮設住宅では空きが増えていた。
 それでもまだまだ、出られていない人がたくさんいる。
 もちろん仮設を出たからといって、終わりではない。
 仮設は形だけの戸はあっても、すぐ隣、また隣の声も聞こえる。
 窓も少ない。
 また、3世代などで住む家族は、プライバシーもないし、しんどい。
 さらに、密集しているから、ストレスの溜まった人たちは陰口を話す人もいる。

 「傾聴ボランティアやっていたから、みんなの前では、受け流していたけど、家に帰ってからボロボロ泣いていた。仮設にいると、神経がズタズタになる」。

「復興」といって前向きにがんばっている人もいれば、前を向けなくて、周りに当たって、自分の心を守る人もいるんだと痛感した。

 誰が悪いとかもないのに。

 コミュニティが狭いから、プライバシーを知りすぎていて辛い部分もあるのではないか、と少し思った。



 傾聴ボランティアの話も少し聞けた。
 傾聴していると、たびたび、
「(失った家族を)いつまでたっても忘れられなくて苦しい」
という人がいるらしい。
 でも、Aさんはそこで、
「忘れちゃダメだよ」
と言う。
 「家族が覚えてなくてどうするの」
と。
 忘れる必要はない。
 忘れてどうすんだ。
 Aさんは、息子さんや娘さんを亡くした。
 だから、みんなの気持がよくわかる。
 忘れちゃダメだって強く言える。



 私は、この話を聞いたとき、どうしても辛かったった。
 そしたら、Aさんは、
 「あんたがそんな顔しなくていいんだって。それで、『かわいそうな人』だって、必要以上にかまわれて、それが理由で好きになられるのは嫌だよ」
と言っていた。

 そんなAさんだから、傾聴ボランティアができるんだろうなと思った。

 傾聴をしていると、負の感情をぶつけてくる人が多い。
 そのため、気持ちも疲れてくるし、ストレスもたまるので、お互いに傾聴し合うこともしているんだとか。
 心のケアは一筋縄ではいかない。
 だからこそ、続けていかないとだめなんだろう。

 そんなAさんの手助けがしたいなと思った。




 仮設に入ってから、高齢の男性が自殺するケースが多いらしい。
 女性の倍だそう。
 なぜかというと、「家が全て」だから。
 一家を支えるのが男なのに、全て流されてしまって、とても責任を感じるそうだ。
 お金もないし、自分の体も弱り、それで…。
 助かった人も、抱えきれなくて、吐き出せなくて、耐え切れなくてということも多い。
 男の人って、なんでも自分で解決しようとするから、それに早く気がついて、わだかまりを溶かしてあげられたらいいのに。


 どうしたらいいんだろう。


 Aさんだけじゃない。
 生き残った人も先に逝ってしまった人も、震災でたくさんの人が、大切なものを亡くしている。
 命を奪われた人、大切な人を奪われた人。元に戻すことはできないけれど、どうか、一日も早く、衣食住を取り戻し、再び自然に笑える日がくることを祈るばかりだ。


 私に何ができるんだろう。



 夕方からは、エゾイシカゲガイの作業を終えた他のゼミ生も来て、一緒にご飯をいただいた。
 少し顔を見に来ただけなのに、一日居てしまった。

 Aさんが、こうして接してくれて、本当にいろんなことを教えてくれるので、それがすごくうれしい。

 Aさんのおかげで、たくさんのことを学びました。

 また遊びにいきます。

(文責:永井)