経済学者・福田徳三の「人間の復興」論

 今日は月命日。震災から3年8ヶ月。今日一日、考えていたことの忘備録です。


 福田徳三は、関東大震災の発生直後の9月10日から、東京商科大生ら延べ65名を率いて5日間、羅災者実地調査を行いました。また、10月13日から7日間、延べ人員72名で芝離宮芝公園内のバラック調査を実施しました。総計2,866世帯、12,969人に及ぶ精力的な調査でした。
 この調査にもとづいて、福田は、政府の帝都復興計画に批判的な観点から、「人間の復興」を提起し、多くの雑誌や新聞に寄稿しました。

 以下、福田の言葉を引用します。


 「復興は決して復興院のみの仕事ではない、否眞の復興者は羅災者自らを措いて外にない。自ら生きんとする強い衝動、人らしく、又獨立獨歩の人間らしく、慈善によらず、救護に頼らず、自らの働きを以って生きて行かんとする堅い決意を以て居る人が復興の最根本動力である。配給を受けることを絶大な恥辱と感ずる意氣ある人によつてのみ、眞の復興が成し遂げ得られるのである
 然るに今日迄の救護は、災後數日のやり方を其の儘継續して居るに過ぎない。羅災者に復興營生の機會を與ふると云ふことに就ては何をも爲して居らぬ。有形物の物質的被害の大なるに驚かされて、大災の爲めに人民の營生機會が滅ぼされたと云ふ無形の損害の甚大なることに氣が付かず、物の恢復許りを念として、此の無形なる損害を恢復し、一日も早く人人皆生産活動を始め、各人に自らの營生機會を獲得せしむることの急務なるを知らないのである。」
(福田徳三著[山中茂樹・井上琢磨編]『復刻版 復興経済の原理及若干問題』関西学院大学出版会、2012年、pp.32-33。原典は、1924年。初出は、同「復興経済の第一原理」『改造』1923年11月号)
 上記の福田の「営生機会」という概念は、生活・営業・労働の機会を総称したものです(同上、p.133)。この考え方は、戦後、憲法生存権規定や、様々な災害復興の経験、災害救助法の制定・改正等々を通じて、部分的には実現されているものもありますが、「物の恢復ではなく無形なる損害の恢復を」、「人間の復興を」という思想は、いまだ輝きを失っていないと考えます。