陸前高田合宿レポート (4) 漁業班

脇坂
 2月9日〜12日、伊達ゼミに入り初めての陸前高田合宿に行った。
 私は漁業班代表を務めた。
 9日、12日はほとんど移動に時間をとられてしまうので活動ができなかったので、10日、11日を中心に活動を行った。
 私を含めた漁業班4人は、朝からBRTで長部まで移動し、今回何度も連絡をとりお世話になったOさんの車で長部漁港へ向かった。

長部漁港
 まずそこで伊達ゼミの先輩方も育ててこられたエゾイシカゲガイを見せていただいた。
 そこにはまだまだ育てている段階の小さなものや出荷できる大きさまで育ったものまであり、土の入れ替え作業、貝を育てている箱からホヤなど邪魔なものを取り除く作業、選別作業を行っておられた。
 2月の気温の中冷たい水での作業はとても大変なものに思われた。
 今回の合宿ではエゾイシカゲガイのお手伝いはしなかった。


 次に、Oさんは、牡蠣養殖の作業場へ案内してくださった。
 そこへ着くと箱にいっぱいの牡蠣、山になっている牡蠣があり、出荷のピークは終わったがまだまだシーズン中なんだなと思った。
 この2日間はここでの作業をお手伝いさせていただくことになった。

Yさんの牡蠣
 私はYさん夫妻の作業小屋にお世話になることになった。
 お二人とも元気なおじいちゃん、おばあちゃんで、素人の私たちに、優しく一から手順等を説明してくださった。
 関西圏に住む私たちからすると牡蠣=広島、兵庫(室津)というイメージが強く、スーパーに行っても岩手産のものを目にすることはほとんどない。
 しかし、ここ広田湾で育てられた牡蠣は何年にもわたり東京の築地市場でナンバーワンを取り続けているブランド牡蠣なのだということを初めて知った。
 今回その牡蠣のお手伝いをさせていただくのだと思うと、なにかとてつもないことをさせていただく気になり、緊張するなか、うれしい気持ちになった。
 養殖作業の手順は、簡単に説明すると、種付け(間引き)、設置、温湯駆除、出荷。
 私たちがお手伝いさせていただいたのは、最初の作業の種付けだ。
 この作業は、ホタテ貝についた種牡蠣をロープにくくりつけるというものだ。

 この種牡蠣は、毎年、1年物を、宮城県の松島から購入されているらしい。
 厳選して購入されてきたものを、さらにYさん自らが選別し、良いものだけをロープにくくりつけていく。
 くくりつけるのは腕の握力をつかい、大変な作業であった。
 また、一定の長さにひとつずつ均等につけていくことが大切で、Yさんは長年の経験でわかるらしいが、私たちは一回一回測っての作業だった。
 量を求めるならもっと多くの種をくくりつけることもできるが、こうすることで、美味しく大きな牡蠣が出来るそうだ。

 その後は海に沈めての育成・管理。
 この工程は今回見せていただくことができなかったので、Yさんと同じ漁港で働いておられるOさんにお聞きしたことをまとめることにする。
 海の中では牡蠣に不純物が多くつくので、それを取り除く作業は欠かせない。
 8月〜9月になると、「温湯駆除」と呼ばれる、とても大切な作業が行われる。
 温湯駆除とは、牡蠣をお湯につけ、菌や虫などの不純物を殺すというものだ。
 牡蠣自体は、ある程度熱に強いので死なず、邪魔なものだけが無くなるというものらしい。
 この作業により、美味しく新鮮なものが出来上がる。
 ただ、真夏に行われる温湯駆除はとても大変。


 また、台風や波の高い日は牡蠣が流されないように、少し沈めたりして、直接波が当たらないように気を付けておられるそうだ。
 種付けをしてから出荷まで約2年半。
大切に育てられた牡蠣は築地市場などで高値で取引される。
 なぜ広田湾での牡蠣は高値がつくのかとお聞きすると、
「それは努力のたまものであり、代々育てている方々が牡蠣を大切にし、毎年いいものを作り出し続けているから信頼を受け、良い評価がもらえる」
とおっしゃられた。
 長年の努力が形となり、ブランド化し、多くの人に認められているのだと思う。


 お昼には実際に牡蠣を食べさせていただいた。

 まずは生牡蠣。
 生というと、あたったりするのが怖くてなかなか手が出ないが、ここの牡蠣は厳重な品質管理を行っておられるので、そのようなことはない。
 殻を開けて中を見せていただくと、普段見ているものの倍はあろう大きさのプリプリの身だった。
 真水でサッと洗い、食べてみると、口いっぱいに磯の風味が広がり、とても美味しかった。
 塩加減もちょうどよかった。


 次に、薪ストーブで焼いていただいた牡蠣。
 こちらは、先ほどの旨味をギュッと濃縮した感じで、プリプリ感は少しなくなるが、新たな食感があった。
 どちらが好きか好みは分かれそうだが、どちらにしろ「パーフェクトフード」とも呼ばれる栄養満点の牡蠣を美味しく食べれられることに変わりない。
 ここの牡蠣を食べてしまっては、他産地の牡蠣はどうしても劣っているように思えてしまう。
 それほど広田湾の牡蠣は美味しかった。


 帰り際にお世話になったYさんと一緒に写真を撮り、「また夏にきます」と約束をしてきた。


(Yさん夫婦と漁業班の4人)

車屋酒場
 11日の夜、車屋酒場において夕食をとり、店主のKさんのお話を聞かせていただいた。
 Kさんについてはゼミの時間中に映像で見ただけだったので貴重なお話をきくことができ、嬉しかった。
 おっしゃられる言葉のひとつひとつに深い意味があり、それを文章に表わすことは難しいが、最も印象に残ったのが、
「若いうちはやりたいことをやって失敗したらええ、明日は何が起こるかわからない」
というものだった。
 あの震災を体験したOさんから受け取ったこの言葉。多くの人に知ってもらいたいと思った。
 いやでやりたくない仕事をして少々高い給料をもらうよりも、少ない給料でも自分のやりたい好きな仕事をした方が充実するし楽しみがある。
 それがKさんにとって飲食店のオーナーだったらしい。
 私は現在、やりたい仕事がまだ見つかっていない。
 しかし、このお話を聞き、本当に自分がやりたいことを見つけようと思った。

 この合宿のなかで、わたしが最も感じたことは“人の温かさ”だった。
 先輩方が何度も訪れ、伊達ゼミの人間だからということもあるかもしれないが、初対面の私たちに優しく、おばあちゃん達は孫のように扱ってくださり、本当に居心地が良かった。
 こちらが元気を与えるために行ったのに、与えてもらったものの方が大きかったように感じる。

‘百聞は一見に如かず’
 実際行って見るまで、思っていたこと、想像していたこととはまったく違った印象を受けた。
 この言葉のほかになんと表現したらいいのか分からない。
 たった二日間だったが、多くの人と触れ合い、多くの人の話を聞き、私の人生の中でもっとも充実した日々の一つだったと思う。

 陸前高田の人はもちろん、これまでなにか「壁」があったように思えるゼミ生同士とも仲良く、それ以上になり、よかった。

 次に訪れる予定の夏。
 それまでに、今回の経験を活かし、よりよい活動ができるように、入念に計画をしたい。
 そして、より多くの人の笑顔が見れる合宿にしたいと思う。

 最後に、今回お世話になったOさん、Yさんをはじめとするハマのみなさん、車屋酒場のKさん、仮設住宅のみなさん、ゼミ生の21人、そしてなにより先生に感謝の言葉を言いたいと思う。
 本当にありがとうございました。