お逮夜法要「ネパール大地震〜今、私たちにできること」

 6月15日(月)のお逮夜法要。
 「阪神・淡路大震災東日本大震災をふまえて、共に悲しむ」という趣旨のお話をさせていただきました。以下はその記録です。

・・・・・・
 ネパール大地震によって、多くの命が喪われました。先週のネパール政府の発表によれば、犠牲者は8,786人に及んでいます。
 行方不明者の捜索は続けられていますが、重機も足りておらず、進んでいないように見えます。
 また、国連によれば、地震で全壊した家屋が51万戸以上、損傷を受けた家屋は39万戸で、支援を必要とする人々は280万人にものぼっています。家を失った方々は、テント生活を余儀なくされています。
 道路が寸断されてしまったため、山あいの農村部での復旧作業は困難を極めているようです。
 ネパールは、今、深い悲しみと苦しみに包まれていると思います。
 改めて、犠牲となられた方々、ご家族に、心から哀悼の意を表するとともに、避難生活を強いられている方々にお見舞い申しあげます。



 今、わたしたちが、ネパールの人びとのためにできること。
 それは、ネパール大地震のことを深く学び、亡くなられた方々、ご遺族の気持ちを想い、「共に悲しむ」ことではないでしょうか。
 4年3か月前、2011年3月11日に発生した東日本大震災でも、多くの命が喪われました。
 死者は15,892人、行方不明者は2,576人です。
 「死者」に分類された方の中には、ご遺体が見つからないにもかかわらず、ご遺族によって死亡届が提出され、葬儀がとり行われたケースもたくさんあります。
 仮設住宅などで避難生活を強いられている人、故郷から遠く離れて暮らしている方々は、いまだ21万人もいます。
 親を亡くした子供たち、「震災孤児」は241人、「震災遺児」は1,531人です。
 被災地では、家族・親せき・友人が亡くなっていない人はいない、「被災者」は、みな「遺族」である。そう言っても過言ではないと思います。
 誰もが、愛する人を喪い、悲しみ・苦しみを抱えながら生きています。
 突然の別れに、茫然自失し、「生きる意味」を見いだせない人も大勢います。
 「亡くなった妻のことを夢で見る」、「夢でいいから娘に会いたい」、「父に会いたい」。
 そのようなお話を、被災地でたくさん聴きました。


 「生きていること自体、有難いことだ」と言われますが、生き残った人びとは、自責の念、罪悪感、後悔の念を抱いています。
 岩手県陸前高田市被災者の言葉を紹介したいと思います。


・「3月11日の夜、暗くて寒い避難所で、海のほうから『助けてくれ!』という叫び声が聞こえたが、停電で何もできなかった。申し訳ない」。
・「妻と一緒に津波から逃げる時、妻の手を放してしまった。なぜ、あの時、手を放してしまったのか。自分のほうが流されればよかったのに。なぜ私なんかが生き残って、妻が死んでしまったのか」。
・「あの日の朝、お母さんとケンカしちゃったから、お母さんは津波に流されちゃったんだ。ケンカなんかしなければよかった」。(この子を見守る心理カウンセラーの言葉)
・「私なんかより、もっと気の毒な方がたくさんいらっしゃるので、そちらの支援を優先してください」。

 また、1995年1月17日の阪神・淡路大震災から20年の歳月が経ちましたが、(私の住む)神戸では、いまなお、答えようのない問いかけをし続けている方がたくさんいらっしゃいます。
 ある女性の話です。


 「地震の直後、おばあちゃんが、とっさに私に覆いかぶさってくれた。そこに天井が落ちてきて、おばあちゃんは亡くなった。私のせいで…」。
 かける言葉もありません。
 私は、ただ、黙って、涙を流すしかありませんでした。


 私は、東日本大震災のあった2011年の7月に父を亡くしましたが、妻や姉そして経済学部の同僚たちから、たくさんの精神的な支えをいただきました。父の死を受けとめられるようになりました。
 大規模災害にみまわれた被災地ではどうでしょうか。
 周りの多くの方が、同じ様に、つらく苦しい体験をされています。
 自分のことだけで精一杯な状況にあります。

 ネパールの方々は、東北や神戸の被災者と同じような悲しみ・苦しみに遭遇しておられるのではないでしょうか。

 大規模災害がもたらす大勢の方々の突然の死。

 それは、解決することがとても難しい問題を私たちに投げかけていると思います。



 最後に、民藝運動の創始者である柳 宗悦の言葉を引用して、私の話を締めくくりたいと思います。


 「悲しさは 共に悲しむ者がある時、ぬくもりを覚える。悲しむことは温めることである。悲しみを慰めるものは また 悲しみの情ではなかったか。」
 (柳 宗悦『南無阿弥陀仏岩波文庫、88頁)
 阪神・淡路大震災東日本大震災をふまえて、「共に悲しむ」ことで、ネパールの方々とつながりたいと思います。
 合掌



【謝辞】
 4月25日にネパール大地震が発生し、27日の月曜日に、文学部の那須英勝先生を通じて、ネパール人留学生のウマ・ラマ・ギシンさん(文学部真宗学科4回生)からボランティア・NPO活動センターに連絡がありました。[私は、センターのスタッフとともに宮城県石巻市を訪問しておりました]。「龍谷大学としてネパール支援の活動ができないか」というお申し出をいただきました。
 その後、センターの学生スタッフとギシンさんとの話し合いがもたれ、「他人事ではない」、「ほっとけない」と、学生有志の会が結成され、学内での募金活動が実施されることになりました。
 5月18日から 5日間、のべ266人という本当に大勢の学生有志たちが、深草・瀬田・大宮の3キャンパスで募金活動を行いました。
 そして、5日間で210,806円というたくさんの支援金を集めることができました。
 私から、皆様に一言、感謝を申し上げたいと思います。
 学生有志たちは、現在も、教職員へ募金の呼びかけを続けており、さらに多くの支援金が寄せられています。
 募金箱は7月末まで設置されています。この顕真館の入口にも募金箱が設置されておりますので、お帰りの際には、ぜひご協力をよろしくお願いいたします。
 集まった募金は、ギシンさんを通じて、カトマンズ本願寺に届けられます。
 そして、カトマンズ本願寺を通じて、ネパールの被災者に届くようにいたします。
 皆様のご理解とご協力を賜りたいと思います。


【ネパール人留学生・ギシンさんによる被災状況の解説】