陸前高田合宿レポート 4回生 (5) エゾイシカゲ貝

荒島 (漁業班)

3回目の合宿。
 これまですべてのゼミ合宿が漁業班で、だんだんと理解が深まり、お手伝いできることが増えていくのが嬉しくて、今回は前回よりも役に立てるよう頑張ることが目標でした。

 1日目。
 今日は海がシケているので、出荷した後のワカメの仕掛けをまた次も使えるように、ゴミを取り除く作業をしました。


 ワカメの仕掛けは、上の写真のように、太いロープに、ワカメの種がついている細い糸を巻き付けています。
 細い糸はもう使わないので取り除き、太いロープをまた使えるようにきれいにしていきます。
 漁師のOさんは、
「今日みたいにシケてるときに、のんびりとこの作業をするのさ」
とおっしゃっていて、その言葉通り、いろんな話をしながらのんびりと作業を行いました。

 一年ぶりの陸前高田は、ところどころで急速に変わっているところがあり、そのことについて話していると、もうすぐベルトコンベアが解体されることを教えていただきました。



 作業をしているそばでも、漁港の防潮堤の建設工事が行われていました。
 漁師さんたちは、
 「防潮堤の建設工事の影響で地盤沈下が発生していて、あちらこちらで段差ができてしまっている」、
 「防潮堤工事に必要なコンクリートを作るために大量に地下水をくみ上げたことに起因する地盤沈下
とおっしゃっていたように記憶しています。
 「15センチの段差でもフォークリフトがパンクする」
と、困っている様子でした。


 「あと一年したら急速に変わるだろうな」
 「震災後、『陸前高田は復興するまでに10年かかる』と言われていたけど、今でもまだ『10年かかる』と言われている」
 出口のないトンネルの中をさまよっているような、どうしようもない現状を実感しました。
 そして、今感じておられるのが、急速な人口減少だそうです。
 Oさんには、野球をしている小学生の息子さんがいて、子どもの人数が少なく、試合に出ることすら苦労しているそうです。
 「小学3年生でレギュラーだからな」と笑っておられました。
 「こんなチームでも、小学生で100キロ超えるようなスピードの球を投げる子もいるんだよ。もしかしたら、その子はプロ選手になれるかもしれない。でも、試合に出られなかったら、なれるものもなれないもんなあ」
 「復興が遅れ、子どもの選択肢が減ってきていることを実感する」
ともおっしゃっていました。
 深刻な問題だと感じました。


 「漁業の担い手が減ってきているのも深刻な問題だ」と話していました。
 漁業は基本的には家族単位で営まれていますが、高齢化が進んで、家族、親せきだけで営むのは難しくなってきています。
 漁業という職業柄、年間を通じて常に仕事があるわけでもなく、また、8時〜17時という定時の労働時間でもないため、なかなかこの条件で働いてくれる人が見つからないそうです。


 こんな話をしながら、作業を進めていき、この日の作業は終わりました。

 シルバーウィークの頃には、新しいワカメの種苗をつけて養殖し始めるそうです。

 作業終わりに、小友町の箱根山展望台に連れて行っていただきました。


 上の写真が大船渡方面で、下の写真が広田湾です。
 この日はシケていましたが、大船渡方面では白波が目立つのに対して、広田湾はとても穏やかでした。
 広田湾がいかに養殖に向いているのかが実感できました。


 2日目。
 この日は朝からエゾイシカゲ貝の出荷があり、漁港に着くとすぐに作業を手伝いました。


 大きさをはかり、選別して

 冷たい海水を注入し、発砲スチロールに入れていきます。
 こうしてエゾイシカゲ貝を生きたまま出荷することができます。
 「活貝」だからこそ、市場で高い価値が出るのです。
 9時半までには出荷作業を終えないといけないため、かなり慌ただしかったです。


 出荷を終えると、今度は、仕掛けを再利用できるように、きれいに洗っていきます。
 そして、洗った仕掛けにビニールをかぶせて網をつけていくという、いつもの作業を行っていきます。
 3回目ということもあり、手際よくすることができました。
 仕掛けすべて作り終えると、この日の作業も終了。

 来年からは新しい作業場所に移動します。
 エゾイシカゲ貝の養殖は大変だけれども、見返りも大きい。
 国の「がんばる養殖支援事業」が終わる2年後からが勝負。
 エゾイシカゲ貝が陸前高田の漁師さんの救世主となればいいな、と心から思いました。


 私は、これまでのゼミ合宿を通じて、陸前高田の漁業について学んできました。
 震災によって急速に進んだ漁業衰退の波は、今後、陸前高田の漁業を「消滅の危機」に追いやってゆくと感じました。
 漁業を営むには多額の費用がかかることから、震災後、再開を諦め廃業する人が多くいました。
 また多額の費用は、新規就業、新規参入の障壁となっており、新たに漁業を始める人はほとんどいません。
 今、漁業に従事している人の高齢者比率も高く、後継者がいない漁業経営体もたくさんいます。
 このままでは陸前高田の漁業は消滅してしまいます。
 これは全国各地で発生している問題であり、寮を完備して、不足している労働力を外国人労働者で補うなどの方法をとっている地域もあるそうです。
 ただ、この方法では、「いざというときに母国に帰ってしまう」という問題点があり、解決策にはなっていないそうです。

 Oさんから聞いたことを自分なりにまとめると、2つの解決策があると考えました。
 1つは、作業を機械化していくこと。
 今年、仕掛けに砂を入れる作業を効率化するための試作機が完成しました。
 まだ使い勝手はよくありませんが、今後、改良が進み、うまく使えるようになれば、少ない労働力でも作業ができるようになります。
 なによりも、試作機をカタチにして初めて見えてきたことも多く、今後もこのような取り組みを続ければ、作業を効率化するイメージがつかめたことが一番良かった点です。

 もう1つは新規就業に対する支援をしていくことです。
 新規に漁業を始めようとすると、約5000万円もの費用がかかってしまいます。漁業権も手に入れないといけません。
 これでは一般の人が始めることはできません。
 新規就業者には、もっと抜本的で大胆な支援をしていくべきだと考えます。

 いままで3回のゼミ合宿を通じて、
 「陸前高田の漁業をなくしてはいけない !」
という思いがますます強まりました。

 漁業で生計を立て、生きがいとする人をこれからもつないでいってほしいと感じました。