陸前高田合宿レポート 3回生 (10) 仮設住宅


9月15日

Aさん
 仮設住宅で一人暮らし世帯の健康チェック活動の中で、1番印象に残っている方は、80歳代のAさんです。
 午前中の仮設訪問で西川くんと訪ねたのですが、「家事をしているから」と、断られてしまいました。
 少し時間を置いて「また来ます」と言ったものの、内心は「また断られるのではないか」と不安でした。
 しかし、2度目の訪問では、暖かく受け入れてくださり、たくさん会話できました。
 Aさんは、「震災後、あまり外出することがなく、人とのコミュニケーションが苦手」とおっしゃっていました。
 集会所のイベントも参加していない雰囲気が感じられました。
 「普段は、スポーツ番組やお笑い番組を見ることが好き」と話してくださいました。
 Aさんは、自分から話すほうではないようなので、こちらから質問や冗談話、世間話をしました。
 笑ってお話ししてくださいました。
 お菓子を持ってきてくださり、
 「食べて !」。
 家のすぐ隣のベンチに3人で座ってお菓子を食べた時間は、私にとって、とても幸せな時間でした。
 翌日の鍋パーティーと棒サッカーのチラシを渡すと、「行く」と言ってくれたことも、本当にうれしかったです。


Bさん
 お昼過ぎに、前川くんとBさん宅を訪問。
 偶然にもAさんのご親戚でした。
 「Aさんとお話ししました」と伝えると、うれしそうに、「もっと話してあげて」と言ってくださいました。
 Bさんの口からも、「Aさんや(前川くんが午前中に訪問した)Cさんは、あまり外出しない」と言っていました。
 「明日の鍋パーティーと棒サッカーには絶対に来てほしいね」と前川くんと話し合いました。

 Bさんは、「みんなには秘密にしている趣味がある」と言って、私たちを家の中に入れてくださいました。
 仮設住宅の中に入るのは初めてなので、とても緊張しました。
 家の中には、震災後に亡くなられた伴侶の方の仏壇、お子さんの写真などがありました。
 「秘密の趣味」と持ってきてくださったのは、◇◇◇。
 「退屈な時間には、これをしている」と言っていました。
 「もともと、震災前から◇◇◇の教室に通っていた。◇◇◇の会の友人がいたが、震災後、みんなバラバラになってしまった」とのこと。
 お世話になった人に贈るために作っているそうです。
 年賀所も手作り。
 「やっぱり、人の真心がわかるものが良い」とおっしゃっておられ、Bさんの作品に引き込まれていきました。
 「私も欲しいな」と話しながら、家にあった◇◇◇の本を見ていると、
 次に陸前高田を訪れたときに、「私の作ったものとBさんの◇◇◇とを交換しましょう」と約束しました。


 震災当時の話もしてくださいました。
 Bさん夫婦は、「あの日、近所の方に声を掛けて一緒に車で逃げようとしたけど、その方々は、結局、車には乗らず、津波にのみこまれてしまった。」
 「坂道の付近で車を止められ、歩いて避難していると、坂の上のほうから『速く!』と声がして、後ろを振り返ってみると、津波がすぐそばまで来ていた。その声がなかったら、もしかしたら死んでいたかもしれない」。
私は言葉が出ませんでした。
 「息子は、高台をかけ登り、助かった。本当に良かった」
とおっしゃっていました。



 Bさんとお話していてわかったことは、沈んだ空気が苦手のよう。
 楽しいことが好きで、とても積極的。
 フラワーロードの花畑の草抜きやお寺の掃除など、ボランティアに行ったり、散歩に行ったり、いろいろな行事に参加したり、「趣味」をすることで、なんとか前向きに生きようとしているのだ、と感じました。


Dさん
 仮設住宅を歩いていると、可愛い犬を連れているDさんに出会いました。
 犬好き同士、会話が弾みました。

 悲しいお話も伺いました。
 「震災のときに、2匹の犬を流されてしまい、突然のさよならになって、悲しくて、別れが悲しすぎるから、『もう犬は飼わない』と言っていたけど、孫から『飼いたい』とずっと言われて、飼ってしまった。今は、心の支えになっている。」

 「震災で流された犬のことを思って泣いているときに、この犬は近寄ってくれて涙をなめて慰めてくれる」。

 長期の外出のときに、他人に預けるのですが、落ち着きがないそうです。
 「たぶん、この場所で、わたしと毎日一緒に寝るのが生活しやすいのだと思う」。
 今のDさんにとって、この犬が、《かけがえのない存在》なのだと感じました。
 
 ペットは会話ができません。
 でも、《言葉では伝えることのできない悲しみを受け容れてくれる、震災で傷ついた心を癒してくれる存在》だと思いました。



 外でワイワイと、ゼミ生たちと楽しそうに話している人たち。
 私も誘われて行ってみると、次から次に食べ物、飲み物をくださって、驚いてしまいました。
 私たちを「孫」のように優しく接してくれました。
 「この方々とばかり話していては、仮設住宅全体の健康チェックが進まない」(笑)と思い、他の所に行こうとすると、悲しそうな顔で「どっか行くの?」と言われ、とまどってしまいました。


 仮設訪問の際、顔を手で隠しながら話される方もいました。
 会話も途切れてしまいました。
 どのように接したらよいか、わかりませんでした。
 しつこく訪問しても嫌がられるでしょうし、今もどうすればよいのか悩んでいます。
 次の合宿までには、自分なりに考えて行動してみたいと思います。



9月16日
 鍋パーティーがはじまり、想像以上にたくさんの方がきてくれました。
 大人数で1つの鍋を囲んでワイワイ食べる楽しさを感じてもらえれば良いな、と思いながら、私自身も一緒に食べながら、お話しをしていました。
 Aさんが来るかどうか気にしながら待っていたのですが、なかなか現れないし、鍋が終わってしまいそうだったので、容器によそってラップをして、西川くんとともにAさんのお宅に届けました。
 とても喜んでくださり、「次に会うのは来年だね」と言って、しばしのお別れをしました。
 「次に会ったときに、名前を覚えてくれていたらいいな」と話しながら、集会所に戻りました。


 棒サッカー。
 開始時間になっても、思っていたより人が少なかったし、初めてするスポーツを楽しんでくれるのかどうか、怪我が起こらないかなど、不安でいっぱいでした。
 でも、ゲームが始まり、おばあちゃんやおじいちゃんの顔を見ていたら、不安が一気に消えていました。

 想像以上に盛り上がり、見ている私も楽しくて、時間があっという間に過ぎてしまいました。
 棒サッカーは準備が大変だし、プレーヤーの人数も多いので、住人たち自身でやることは難しいだろうけれども、棒サッカーというスポーツがあることを知ってもらえました。
 皆さんに「楽しかった!またやりたい!」と思っていただけたので、私は大満足でした。
 反省点としては、途中から参加した人が入りやすい空気づくり。
 プレーヤーが楽しめるように、座る位置への配慮。
 準備のスピードなど。
 これらは改善課題だと思います。