岩手日報「震災不明者の家族、区切りつかず 悲嘆ケア充実 切実」

 『岩手日報』2015年12月18日付より転載します。


震災不明者の家族、区切りつかず 悲嘆ケア充実 切実
 東日本大震災から4年9カ月が過ぎた被災地で、行方不明者の家族の心の傷が深まっている。遺体が見つからないため心に区切りをつけられず、生活再建にも影を落とす。
 専門家は、多数の行方不明者を出した津波災害で「あいまいな喪失」と呼ばれる特徴的な悲嘆が生じ、時の経過とともに深刻化していると指摘。ケアの充実を訴える。
 県警や海上保安庁は懸命の捜索を続けているが、県内ではまだ1,124人の行方が分かっていない。


 宮古市のSさん(61)は、震災で会社員だった夫のTさん=当時(61)=を失った。同市で岸壁工事をしていたTさんは同僚3人とともに津波にのまれた。1人は助かり、2人は遺体が見つかったが、Tさんは行方不明のままだ。
 2011年6月に死亡届を出したが、Sさんは「いつ警察から『DNAが一致しました』と連絡が来るかと思うとなかなか家を空けられない。頭では分かっていても心がついていかない」と打ち明ける。
 周囲から「義務感で縛り付けられているだけじゃないの」と言われることもあるが、「遺体さえ見つかればどこかで踏ん切りがつくのだけれど」と悩む。

 あいまいな喪失に詳しい龍谷短期大学部の黒川雅代子准教授(社会福祉学)は「Sさんのような状況を乗り越えるには周囲のサポートが大切だ」と指摘。啓発活動や、同じ感情を持つ人同士が語り合い孤立を防ぐファミリーミーティングの開催などを提案する。当事者に対しては「まずは自分が『あいまいな喪失』であることを知り、状況が変わらずとも順応していくことが必要だ」と話す。
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 「あいまいな喪失」