神戸新聞コラム「『人が基本』の復興検証を」

 昨年の神戸新聞12月21日付、編集委員会長・沼隆之氏の日曜小論です。
 まったく同感です。
 さすが神戸新聞です。
 多くの方々に読んでいただきたいです。


「人が基本」の復興検証を 

東日本大震災から4年9カ月が過ぎ、沿岸被災地では津波からまちを守る防潮堤の建設が進む。早期完成が待たれる一方で、徐々に姿を現す「壁」の高さに戸惑いを隠せない住民も少なくない。

 11月中旬、岩手県陸前高田市を訪れた。約300ヘクタールという被災地最大規模の土地区画整理事業が導入され、高台の造成工事が盛んだ。先行地区は11月下旬に宅地の引き渡しが始まったが、遅い地区では事業完了は2018年度。復興が長期化する中、被災者の気持ちが揺らいでいる。

 行政も対応に苦慮する。住宅再建をあきらめて災害公営住宅への入居を希望したり、事業期間を待ちきれずに転居したりするなど、住民の流出が止まらない。膨大な費用をかけたのに、人があまり住まない宅地ができてしまう恐れがある。事業の柔軟な見直しは不可欠だが、住民の意向を綿密に把握することで工期が遅れるジレンマもある。

 被災市町村は、国がほぼ100%措置する復興交付金による事業を念頭に復興計画を立て、その進ちょくが復興の評価基準になっている。

 これに対し、神戸大大学院国際協力研究科の金子由芳教授は「岩手県の復興基本計画では、被災者一人一人の安全や生活再建を掲げている。事業だけでなく、その理念に照らした被災者による復興評価が必要」と指摘する。

 阪神・淡路では、神戸市が震災5年を前に、復興検証の研究会を設置。学識者や地元NPOらをメンバーに、被災者の目を通して課題や教訓をすくい上げ、後期5カ年の復興施策にも反映した。

 東日本の被災地でも、6年目に入る復興の課題を検証し、洗い直す作業が要る。何よりまず、被災者という「人間」に目を向けること。「造成が進み、ようやくまちづくりを考えられる余裕が出てきた」と話す住民がいた。今からでも遅くはない。もう一度、それぞれの地域で、将来ビジョンを共有してほしい。

「今からでも遅くはない」。


 地元・岩手日報の連載「再興への道〜いわて東日本大震災 検証と提言」第26部「防潮堤が問う減災」も参照してください。
 ・「姿現す12.8メートルの壁 高さに戸惑う住民も(12月7日)」
 ・「景観めぐり議論 並んだ窓『何のため』(12月8日)」
 ・「構造の進歩と限界 弱点強化も避難基本(12月9日)」
 ・「整備後の維持管理 のしかかる重い負担(12月12日)」
 ・「海と共に生きる まちに刻む避難意識(12月13日)」


【研究会のお知らせ】
 知人がやっている研究会です。関西で、被災地の防潮堤問題を学ぶことができる数少ない機会です。ぜひ !

 ※ESDとは、Education for Sustainable Developmentの略で、「持続可能な開発のための教育」と訳します。


【参考】
(1) 金子由芳「被災者に届かぬ復興予算―『人間の復興』の阻害構造」日本災害復興学会誌、第6号(Vol.4 No.2)
(2) 会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について』」平成27年3月


 「岩手県及び管内の14市町村が24年3月から26年6月までの間に復興庁から通知を受けた復興交付金の交付可能額は、表21のとおり、基幹事業分が計4824億余円、効果促進事業分が計652億余円、合計5476億余円となっている。
 これを県及び管内市町村別にみると、図12のとおり、岩手県に対して通知された交付可能額は1130億余円、14市町村に対して通知された額は計4346億余円となっていて、14市町村に対して通知された交付可能額が全体の約8割を占めている。
 市町村に通知された交付可能額を地域別にみると、・・・交付可能額が多額となっているのは、陸前高田市(交付可能額937億余円)、釜石市(同831億余円)、山田町(同671億余円)等である。」