陸前高田合宿レポート (1)

亀村 萌

 「陸前高田に行って一人、ひとりと接する。」
 これがわたしの陸前高田合宿で知らなければならないことでした。
 浄土真宗本願寺派総合研究所・研究員の金沢豊さんのお話を聞いた時も、今までのゼミ活動においても、私は「被災地」「被災者」という言葉でしか向き合えていませんでした。
 あれだけ膨大な地域、人びとが、たった数時間で被害に遭い、今もなお苦しんでいる。それは皆、同じだと勝手に思い込んでいたからです。
 今回実際に陸前高田の方達と触れ合ってみて、人それぞれが心にうけた傷の大きさ、震災に対する思いは全くちがうことを目の当たりにし、「正解」はこれから先もわかることはないけれど、自分なりに「一人、ひとり」がわかったようにも思えます。



 陸前高田に着いたときから、地元の方たちはとても優しく私に話しかけてくださいました。
 観光案内所のおじさん、鈴木旅館のお風呂で会話したおばあちゃん、仮設住宅でお会いしたみなさんが、
 「どこから来たの?寒いでしょう?」
 「よく来たねー」
と素敵な笑顔で迎え入れてくれ、自分が想像していた堅苦しいイメージとは全く違い、とても温かく穏やかでした。 
 復興工事がおこなわれ、更地や盛土が広がる風景とは全く一致しない。本当に被害をうけた方たちなのだろうか。そう感じてしまうほどでした。



 しかし、仮設住宅でチラシ周りをしている時、私の手を握りながら、
 「私のお兄ちゃんが2人、津波で流されてしまってね…」
と話してくれたおばあちゃんがいました。
 私は、そこで初めて津波によって大切な人を亡くされた一人と向き合うことになりました。正直、私は動揺してしまって、おばあちゃんの手を擦りながら、
「そうだったんですね…」
と言い、口をつむぐことしかできませんでした。
 そんな私を見越してか、おばあちゃんは明るい話題に話を変えてくれましたが、おばあちゃんの懐かしむような、悲しんでいるような目がとても忘れられません。
 もうすぐ仮設住宅を出ていくというこのおばあちゃんは、高田一中の体育館で避難所生活していたときの話、仮設住宅ができた時の話をしてくださいました。
 「3月11日、たくさんの方が亡くなってしまったけれど…元気!元気!」
といい、私をぎゅっと抱きしめてくれました。
なんだか私が皆さんに元気付けられているような、励まされているような、そんな気がしました。
 私よりも誰よりも心に深い傷を負ったのは、陸前高田の方々皆さんなのに、逆に気を遣わせてしまったのではないか。
 そんな気がしてなりません。



 鈴木旅館で夜寝る前、落ち着いてよく考えていたのは、仮設住宅のおばあちゃんおじいちゃんも、道端で挨拶を交わした方も、晩御飯を頂いた鶴亀鮨の阿部さんも、参吉のみなさんも、マイヤでお買い物をしているお母さんも、全員が3月11日、あの日に大切な人・大切な場所を失ったということ。
 それでもなお、前を向いて生活をしているんだということ。
 今回、合宿を通して、陸前高田の方一人ひとりの傷に触れることになりました。が、私には傷を癒すことはできないというのが正直な感想です。神や仏ではないし、金沢さんのように傾聴をできたのか定かではありません。
 そんな私ができることは、その傷を受け止めることだなと思いました。
 たとえ3月11日の話を聞けなくても、気のきいた返事ができなかったとしても、一緒に笑いあう、他愛もない話をする、本当のおばあちゃん、おじいちゃんのように接する、「一人、ひとり」を丸ごと受け止めるということが、その人の受けた傷を受け止めることにつながっているのではないか。
 合宿を終えて私が感じたことです。



 もうひとつ合宿を通して感じたことは「絶対忘れてはいけない」ということです。
 それは、東日本大震災での被害の大きさは当然のことですが、今回お会いした「陸前高田の方、一人、ひとり」をです。
 それを実感したのは、仲良くなったおばあちゃんに言われたある一言でした。
 涙を浮かべながら、
 「私のこと忘れちゃったのかと思った。ずっとお礼を言いたかったのよ。」
という言葉です。
 一緒にお鍋を食べていて、「あとで戻ってくるね」と席を外し、しばらくして、おばあちゃんが帰り際に話し掛けてくれた時の言葉です。
 この言葉を聞いて、私はものすごく後悔しました。
 今でも後悔しています。
 おばあちゃんに悲しい思いをさせてしまった、そんなつもりはなかったのに…と。



 「合宿で2日間、仮設の方と交流を持てたから満足」「また9月に会えるから」という考えは間違っている。
 会えない時間も、「私たちはみなさんを忘れていないよ、ずっと覚えているんだよ」と伝えることが大切なんだと実感しました。
 住所や連絡先を教えてくださった方たちにこまめに連絡を取ろうと思いました。
 「これから先も新しい関係を作っていく方々」として、大切に接していきたいです。



 子供たちと遊んでいて、ある女の子が、ふとした瞬間にこんなことを言いました。
 「人は簡単に死んじゃうんだから」。
 その子は笑って言いましたが、その小さい体にどれほどの痛みを抱えているのかと思うと、涙が出てきてしまいます。
 その子の言うとおり、人は簡単に死んでしまいます。
 震災の数時間で奪われたたくさんの命、連日ニュースで流される人の死。
 私にもいつ訪れるのか解りません。
 だからこそ、一日一日を精一杯生きようと思いました。
 陸前高田でお会いした方たちを自分なりに精一杯愛そうと思いました。



 今回、陸前高田に合宿に行って、みなさんの優しさ、温かさに触れ、私の思っていた「被災地」「被災者」は、一気に崩れ去りました。
 一人、ひとりの苦しみのちがい、身をもって知りました。
 これから先のゼミ活動においても、9月にまたみなさんと会う時も、「一人、ひとり」と触れ合うこと、考えることを大切にしていきたいです。