◆立花慶太
私たち伊達ゼミナールは、2月5日から2月8日まで岩手県陸前高田市で初めての合宿を行いました。
これまで、テレビや写真でしか見たことのない震災後の陸前高田に行くことに緊張と不安を持ちながら、京都を出発しました。
仙台からのバスが陸前高田に入ったとき、自分の目を疑いました。
「震災から5年の月日が経とうとしているのだから、ある程度の建物が建っているだろう」と私は思っていたからです。
あたり一面、土があるだけで、建物はほとんどありませんでした。
自分の住んでいる京都の風景との違いに、ものすごい衝撃を受けました。
京都には余っている土地はほとんどなく、マンションやお店などがいっぱい建っています。
陸前高田の風景は、震災復興の困難さを物語っているように感じました。
仮設住宅では、たくさんのお宅を訪問させてもらいました。
一軒、とても記憶に残っているお宅があります。
集会所でWiiをして遊んでいる最中、順番待ちをしていたA君という子供に、
「もっと面白いWiiのソフトがあるから、今から家に来て!」
と言われ、訪問させてもらいました。
A君のお宅に着き、ソフトを探している最中に、私が、
「もっと面白いソフトって、どんなゲーム?」
と聞くと、A君が、
「おれが今、はまっているゲームだよ!最近、いつも、そのゲームをやって、すごい強くなったから、今から見せてあげる!」
私はA君の実力に手も足も出ず、ボコボコにやられながら、
「うわ!またやられた!」
などと言っていると、A君が、
「やっぱりコンピューターを倒すよりも、人を倒した方が反応あって、面白いなぁ。」
と言いました。
「いつもは一人でゲームしているの?」
「そうだよ。ほかの人とも一緒にゲームをしたいけど、する人があまりいないし。最近までは、もう少し同級生が多かったんだけれど、どんどん新しい家に引っ越してっちゃった。」
と言われました。
現在、仮設住宅に暮らす子供は少なくなっているようです。
友達が次々と引っ越しし、ゲームをする機会が減ったので、誰かに自分の実力を見せたくてうずうずしていたのだと思います。
1日目の鍋パーティでは、おばあちゃんたちに鍋の具材を取り分ける「ホスト役」をしようと心がけていましたが、おばあちゃんたちの方から、「もっと食べなさい」、「好きなもの取ってあげる」など言っていただき、逆にもてなされてしまいました。
私がいっぱい食べているところを、とても喜んでくださり、自分の祖母を思い出し、嬉しかったです。
食後に皆さんと交流をしていると、退屈そうにしている子供たちが目に留まりました。
その子たちは、あまり楽しそうにはしておらず、ただ無言で鍋を食べているだけでした。
そんな子供たちに話しかけにましたが、最初は全然相手にしてくれず、途方に暮れていました。
「松岡修造カルタをしよう !」
と提案すると、意外と食いついてきてくれて、一緒に遊ぶことができました。
カルタの食いつきの良さには、子供たちの「遊びに対する餓え」のようなものを感じました。
カルタをしているとき、最初、自分は、接待プレイをしようとしていましたが、途中から大人げないほど本気になってしまい、
「いまのは俺がとった!」、
「いや、あたしのほうが早かった!」
と、だんだん会話が増えていき、次第に、子供たちから「なめられる存在」になりました。
「おい、立花!」
と、呼び捨てで呼んでもらえるができました。
子供たちから「なめられるような存在」になることは、今回の合宿での私の目標でありました。
「なめられるような存在」とは、子供と対等な立場で渡り合え、気を遣わずに済むからです。
実際、私は今回の合宿で、「遠慮が全くない」と断言できるほどの雪玉を子供たちからあびせられました。
そのような関係を作れたのも、「なめられるような存在」になれたからです。
カルタをやり終えた後、
「サッカーや野球をして外で遊ぼう」
と提案すると、子供たちからは、
「ボール持っていない」、
「サッカーできる場所なんてないよ」
とネガティブな返事で、戸惑いました。
確かに外に出てみると、仮設住宅があるグランドには遊び場がほとんどなく、野球やサッカーなどの広く場所をとるスポーツをすることができない状況でした。
仮設住宅は、住人の車が頻繁に出入りするので、ボール遊びをすることは危険な状況でした。
子供たちに、
「仮設住宅以外でサッカーする場所はないの?」
と質問してみると、
「サッカーを習ってはいるけど、練習場に行くには車で15分かけて送ってもらっているから、親と一緒じゃないと行けないんだ」
と言われました。
サッカーをめぐる深刻な事情を子供から聞きました。
集会場で子供たちとゲームをしているとき、
「久々にここでゲームをする」
と言っていました。
普段はあまり集会場を利用していないことがわかりました。
集会場にはいろいろな遊び道具があるのに、普段は高齢者が使用していることが多く、子供だけでは入りにくい場所になっているようです。
鬼ごっこや雪遊びをしましたが、子供たちは、集会場にいた時よりもはるかにはしゃいで体を動かしていました。
子供を追いかけたり、追いかけられたり。
後半になると、私の方が先に、足を動かすことがしんどくなり、座り込んでしまうほどでした。
子供は、自分が思っていた以上に元気でした。
その元気を爆発させるためには、外で遊ぶことが一番重要だと気づかされました。
仮設住宅の敷地では、球技を使った遊びをすることが難しいです。
子供の元気をくすぶらせないためには、外でのびのびと元気よく遊べる場所を増やしていくことが大事なのではないか。
今回の合宿で学びました。
短い間でしたが、高田一中仮設のみなさんには本当にお世話になりました。
夏の合宿では、ちがう遊びを考えて、もっと楽しませてあげたいです。